株式会社の初期費用は約25万円。3つの引き算で9万円台まで落とす
株式会社の設立費用は、検索するとだいたい「約24万円」と出てきます。この数字は間違いではありませんが、何も工夫しなかった場合の金額です。条件が揃えば、同じ株式会社が9万円台で作れます。
差額の15万円は、値切ったわけでも裏技を使ったわけでもありません。制度として用意されている引き算を3つ使っただけです。この記事では、まず何もしない場合の内訳を出し、そこから1つずつ引いていきます。
まず、何もしない場合の金額

紙の定款、資本金300万円、専門家に依頼せず自分で手続きする——という前提で計算します。
グラフを見ると分かるとおり、費用の大半は登録免許税と定款認証まわりです。印鑑や証明書は合計で2万円弱にすぎません。つまり費用を落とすなら、この2つに手を入れるしかないということになります。
引き算その1|電子定款にする(−40,000円)

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−40,000円
紙をやめると、印紙税が消える
収入印紙4万円は、紙で作成した定款が印紙税法上の課税文書にあたるためにかかります。PDFに電子署名した電子定款は課税文書に該当しないので、印紙代そのものが発生しません。
必要になるのは、マイナンバーカード、ICカードリーダー(または対応スマートフォン)、電子署名用のソフト。すでにカードを持っているなら追加費用はほぼゼロですが、環境構築で2〜6時間かかります。行政書士に電子定款の作成だけ依頼した場合の相場は5,000〜10,000円なので、時間を買う判断も十分に合理的です。
引き算その2|定款認証手数料の特例を使う(−35,000円)

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−35,000円
一人で小さく作るほど安くなる
2024年12月に改定が入り、一定の条件を満たす株式会社の定款認証手数料が15,000円になりました。資本金300万円以上なら本来50,000円なので、差額は35,000円です。
条件は4つ。資本金100万円未満、発起人が全員個人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款にある、取締役会を置く旨の記載がない。一人で作るなら、資本金の設定さえ気をつければ自然に当てはまります。
| 資本金と条件 | 認証手数料 | 差額 |
|---|---|---|
| 99万円・特例4条件を満たす | 15,000円 | 基準 |
| 99万円・特例条件から外れる | 30,000円 | +15,000円 |
| 100万円〜300万円未満 | 40,000円 | +25,000円 |
| 300万円以上 | 50,000円 | +35,000円 |
引き算その3|登録免許税を半額にする(−75,000円)

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−75,000円
市区町村の創業支援を修了すると、税率が半分になる
もっとも効果額が大きいのに、もっとも知られていない制度です。国から認定を受けた市区町村が実施する「特定創業支援等事業」の支援を受け、証明書の交付を受けると、設立登記の登録免許税が半額になります。
株式会社なら税率0.7%が0.35%に、最低税額15万円は75,000円に。合同会社なら6万円が3万円になります。効果額だけ見れば、3つの引き算のなかで最大です。
支援の中身は自治体によりますが、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野について、1ヶ月以上かつ4回以上の継続的な支援を受けるのが一般的な要件です。創業セミナーや個別相談という形で提供されています。
時間の制約:支援に1ヶ月以上、証明書の交付にさらに数日〜2週間かかります。設立を急いでいる人は使えません。逆に、設立まで2ヶ月以上の余裕があるなら、検討する価値は十分にあります。
対象外になる例:すでに会社を経営していて2社目を作る場合、対象外です。また創業予定または創業後5年未満であることが条件です。
3つ全部を適用した結果

258,500円が99,500円になりました。削ったのは手数料だけで、会社の中身は一切変えていません——ただし資本金は300万円から99万円に下げています。ここだけは事業判断が必要な部分です。
資本金を下げることの、本当のコスト

費用を最小にするために資本金99万円を選ぶと、認証手数料は下がります。ただし資本金は対外的に見られる数字でもあります。実際に影響が出るのは次の3場面です。
法人口座の審査。資本金が極端に少ないと、事業の実体を疑われることがあります。1円設立で口座開設が止まった、という話は現実にあります。ただし99万円であれば、この点で問題になることはまずありません。
創業融資の審査。日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金がどれだけ準備できているかが見られます。資本金がそのまま自己資金の評価になるわけではありませんが、無関係でもありません。融資を前提にしているなら、資本金を絞りすぎない設計のほうが説明しやすくなります。
取引先の与信。登記事項証明書には資本金額が載ります。BtoBで大手企業と取引する場合、この数字を見られる可能性はあります。とはいえ、設立直後の会社に対して資本金の多寡で判断する取引先は多くありません。
設立費用と、開業に必要なお金は別枠

ここまで計算したのは、あくまで会社を登記するための手数料です。事業を始めるためのお金は1円も含まれていません。PC、ソフトウェア、名刺、ウェブサイト、機材、仕入、そして売上が立つまでの自分の生活費。これらは別枠で用意する必要があります。
実務上の目安として、設立費用の10〜20倍を運転資金として見ておくと、初年度で資金が尽きる事態を避けやすくなります。設立費用が10万円なら、100〜200万円。この数字は業種によって大きく変わりますが、「設立費用しか用意していない」状態で始めるのは危険だという点は共通します。
専門家に頼む場合、費用はどこまで増えるか

ここまでは自分で手続きする前提で計算してきました。専門家に依頼する場合、実費に報酬が上乗せされます。相場感を整理しておきます。
司法書士に設立登記を一括で依頼する場合、報酬は5〜10万円が目安です。定款作成から登記申請まで通しで任せられるため、こちらが用意するのは基本事項の決定と印鑑証明書くらいになります。許認可が絡む場合や、複数の出資者がいる場合は、これより高くなることがあります。
行政書士に電子定款の作成だけを依頼する場合は5,000〜10,000円。収入印紙4万円が浮くので、差し引きで3万円以上得になります。設立手続きのなかで、費用対効果がもっともはっきりしているのがこの依頼です。
税理士事務所が提供する「設立手数料0円」のサービスは、顧問契約とセットになっている形が一般的です。月額の顧問料が2〜4万円、決算申告料が別途10〜20万円というのが小規模法人での相場なので、年間トータルでは数十万円の支出になります。どのみち税理士を頼む予定があるなら合理的な選択ですが、当面は自分で経理を回すつもりなら、契約期間の縛りを確認してから判断してください。
もうひとつ考慮すべきなのが、依頼すると特定創業支援等事業の証明を使いにくくなる場合があるという点です。証明書の取得には1ヶ月以上の支援受講が必要で、依頼先のスケジュールと合わないことがあります。効果額75,000円と報酬50,000〜100,000円を比べると、この判断は無視できません。急がないのであれば、先に創業支援を受けてから依頼するのが最も安く済みます。
まとめ

「会社 立ち上げ 初期費用 株式会社」で検索すると、24万円・22万円・11万円と、記事によって金額が違います。これは紙定款か電子定款か、資本金をいくらに置いているか、印鑑代や証明書代を含めているかという前提の差です。金額を比べるときは、まずその前提を確認してください。
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