一人で会社を作るなら、いくら用意するのか。設立費用+開業費+運転資金6ヶ月
「一人で会社を作るのに、いくら用意すればいいですか」という質問には、3つの数字を足して答える必要があります。設立費用、開業費、そして売上が立つまでの運転資金です。
このうち、多くの人が計算しているのは1つめだけです。設立費用は調べれば出てくるので分かりやすい。一方で3つめの運転資金は、自分の事業と生活に依存するため、誰も代わりに計算してくれません。そして、金額として最も大きいのはこの3つめです。
3つの層に分けて積み上げる

第1層|設立費用
7万〜25万円会社を登記するための手数料です。会社形態と、軽減措置を使えるかどうかで決まります。
第2層|開業費
10万〜100万円事業を始めるために必要な、一度きりの支出です。業種によって桁が変わります。一人で、自宅を拠点にする知識サービス系ならもっとも小さく収まります。
第3層|運転資金(6ヶ月分)
120万〜300万円売上がゼロでも出ていくお金を、6ヶ月分。ここに自分の生活費を含めることが最大のポイントです。会社の固定費だけ計算して、自分が食べていく分を数えていない計画をよく見ます。
実際に足してみる

+ 開業費 250,000円
+ 運転資金(月28万円 × 6ヶ月) 1,680,000円
この計算で重要なのは、設立費用が全体の4%しかないという点です。ここを数万円削る努力は意味がないわけではありませんが、資金計画の本体はそこではありません。
毎月出ていくものを、正確に把握する

一人会社でもっとも重い固定費は社会保険料です。個人事業主のときは国民健康保険と国民年金でしたが、法人になると健康保険と厚生年金に切り替わり、会社負担分と個人負担分の両方を自分の会社が払うことになります。
役員報酬を月20万円にした場合、労使合計の保険料はおおむね月58,000円前後。年間で約70万円です。これが、法人化して増える固定費の中心になります。将来の年金額が増えるという見返りはありますが、キャッシュフロー上は明確な負担です。
次に効いてくるのが法人住民税の均等割。赤字でも払う税金で、資本金1,000万円以下・従業員50人以下なら年7万円程度が一般的です(自治体により異なります)。月割にすると約5,800円。
この2つだけで、売上ゼロでも年間77万円が出ていきます。個人事業主にはなかった支出なので、法人化の判断材料としてここは外せません。
役員報酬をいくらにするか、が資金計画を決める

一人会社では、自分の生活費は役員報酬から出ます。そして役員報酬には、原則として期中に変更できないという制約があります。事業年度開始から3ヶ月以内に決めた額を、その期は払い続けることになります。
ここが資金計画の要になります。報酬を高く設定すれば生活は安定しますが、社会保険料も所得税も上がり、会社に残るお金が減ります。低く設定すれば会社にお金は残りますが、自分の生活が回りません。しかも途中で変えられない。
逆に、報酬をゼロにすると社会保険の加入義務が生じないため、在職中に会社を作る場合や、当面は個人の貯蓄で生活できる場合には、この選択も現実的です。ただし報酬ゼロだと会社の経費に人件費が計上されず、また社会保険の空白期間が生じる点は理解しておいてください。
株式会社と合同会社で、必要額はどれだけ変わるか

差は約10万円です。これを200万円の資金計画のなかで見ると、5%程度。会社形態の選択を、必要資金の観点だけで決める理由は薄いということになります。
むしろ判断すべきは、その10万円を何に使うかです。10万円あれば、初年度の会計ソフト代が3年分まかなえます。ウェブサイトの初期制作費に充てることもできます。設立費用として消えるか、事業に投資されるか——この観点で考えると、合同会社を選ぶ判断がしやすくなります。
個人事業主のままだと、いくらで済むのか

比較対象として、同じ事業を個人事業主で始めた場合の金額も出しておきます。判断材料として、この差は知っておく価値があります。
開業費用は0円です。税務署に開業届を出すだけで、手数料はかかりません。印鑑も屋号印を作る人はいますが、必須ではありません。設立費用7〜25万円が、まるごと消えます。
毎年の固定費も大きく変わります。法人住民税の均等割(年7万円)はありません。社会保険は国民健康保険と国民年金で、所得が低ければ保険料も低く抑えられます。会計も、青色申告ソフトを使えば自分で完結できる規模に収まります。税理士に頼まなければ、年間の維持費は数万円で済みます。
つまり、法人化することで増える固定費は年間70〜80万円前後。これは事業がうまくいくかどうかに関係なく発生します。この金額を上回るメリット——所得の分散による節税、消費税の免税期間、法人でなければ取れない取引、社会的信用——があるかどうかが判断の分かれ目です。
一方で、金額だけで決まらない理由もあります。法人でないと契約できない取引先がある、消費税の免税期間を新たに得たい、有限責任にしておきたい。こうした事情があるなら、所得が800万円に届かなくても法人化する合理性はあります。
足りない場合、どうするか

200万円を全額自己資金で用意できる人ばかりではありません。不足分をどう埋めるかの選択肢は、実質的に3つです。
日本政策金融公庫の創業融資。もっとも一般的な手段です。設立直後、実績がない状態でも申し込めます。審査で見られるのは創業計画書の内容と自己資金の準備状況。必要額の3分の1程度を自己資金で用意できていると説明がしやすくなります。
自治体の制度融資。都道府県や市区町村が信用保証協会と連携して行う融資です。金利の一部を自治体が補助する仕組みがあり、条件によっては公庫より有利になります。ただし手続きに関わる先が多く、実行までの期間は長めです。
設立時期をずらして自己資金を貯める。地味ですが、もっとも確実な方法です。特に、在職中に副業として事業を始めて実績を作り、売上の見込みが立ってから法人化するという順序は、資金面でも審査面でも有利に働きます。
お金が動く順番を、時系列で押さえる

最後に、資金がいつ動くのかを時系列で整理しておきます。金額だけ用意していても、タイミングが合わないと止まります。
設立前。印鑑代、個人の印鑑証明書代、電子定款の代行費。ここは個人の財布から出ます。数万円規模ですが、会社の口座がまだないので、必ず立て替えになります。
定款認証の日。株式会社なら認証手数料と謄本代。合同会社ならこの支出はありません。
払込の日。資本金を発起人個人の口座に入金します。これは支出ではなく、自分の口座の中で動くだけです。ただし「入金の記録」が必要なので、いったん出して入れ直す手間が生じることがあります。
登記申請の日。登録免許税。金額としては最大の支出です。収入印紙を購入して申請書に貼るか、電子納付します。ここも会社の口座はまだ使えないので、個人が立て替えます。
登記完了後。登記事項証明書と印鑑証明書の取得費用。そして法人口座の開設申込み。口座が開くまでの2〜4週間は、会社名義で受け取ることも払うこともできません。この期間の支払いも個人が立て替えることになるため、手元に現金を残しておく必要があります。
整理すると、設立から法人口座が使えるようになるまでの1ヶ月半、すべての支出は個人の立て替えです。資本金として100万円用意していても、それは会社の口座に入るお金であって、この期間は使えません。設立費用と当面の立て替え分を、資本金とは別に手元に残しておいてください。
まとめ

- 必要額=設立費用+開業費+運転資金6ヶ月分。合計200万円前後が一つの目安
- 設立費用は全体の4%程度。ここだけ調べても資金計画にならない
- 売上ゼロでも社会保険料と均等割で年77万円が出ていく
- 役員報酬は期中に変更できない。生活費から逆算して決める
- 株式会社と合同会社の差は約10万円。全体の5%にすぎない
- 不足分は創業融資・制度融資・時期をずらすの3択
「会社 立ち上げ 初期費用 一人」で検索すると、設立費用の記事が中心に並びます。一方で、一人会社で実際にいちばん効いてくる社会保険料や役員報酬の話は、別のキーワードで書かれていることが多く、同じ記事内で完結しません。資金計画を組むなら、費用の記事と維持費・社会保険の記事の両方を見ておくと精度が上がります。
- freee|一人で会社を作るときに必要な費用は?会社設立や事業開始にかかる費用設立費用と事業開始費用を分けて扱っており、この記事の3層に近い構成です。
- freee|一人で会社を作る手順は?メリット・デメリットや個人事業主との違いも解説一人会社の全体像。費用以外の判断材料も揃っています。
- 弥生|1人で会社を作る手順は?個人会社と個人事業主の違いや費用について解説個人事業主との費用比較。法人化の損益分岐を考える材料になります。
- マネーフォワード クラウド会社設立|一人で会社を作る手順は?会社設立のメリットやリスク一人設立のリスク面にも触れており、資金計画の前提になります。
- ベンチャーサポート|【一人で会社を作る手順】設立時の注意点や一人会社のメリット一人会社特有の注意点が列挙されています。
- みずほ銀行|一人で会社を作る手順は?必要書類や費用、個人事業主との違いも解説金融機関の視点。法人口座と資本金の関係を考えるのに役立ちます。
- 会社設立GOAL|一人で会社を作る手順を解説!費用や必要書類は?資本金1円から設立できる制度の背景と、実際にいくら入れるべきかを扱っています。
- マネーフォワード クラウド会社設立|会社設立でかかる維持費や年間費用は?毎年出ていくお金。運転資金の見積もりに直結します。
- freee|会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説設立費用と維持費を一続きで扱っています。
- 弥生|会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説形態別の費用差。第1層の金額を確定させるのに使えます。
- ベンチャーサポート|会社設立の費用は11万〜24万円!設立前後のコストを徹底解説設立前後でコストを分けた整理。3層の考え方と相性がよい記事です。
- 創業融資ガイド|株式会社を設立する際にかかる費用とその内訳融資を前提にした費用の見方。不足分を埋める検討に役立ちます。
- サン共同税理士法人|会社設立する時にかかる費用はどのくらい?税理士法人の視点。役員報酬や税務との関係が扱われています。
- 中小企業庁|会社設立時の登録免許税の軽減について設立費用を下げる制度の一次情報です。
- 弥生|合同会社の設立費用はいくら?登録免許税や資本金の相場資本金の相場に触れており、いくら入れるかの判断材料になります。
- IDEMAE|合同会社の設立費用はいくらかかる?内訳・安く抑える方法を解説一人・合同会社という組み合わせでの実費が具体的です。
- J-Net21(中小機構)|株式会社の設立手続き公的機関の解説。制度面を中立的に確認できます。
- 三井住友銀行|会社設立とは?必要な手続と費用、設立までの流れを詳しく解説口座開設までの時間を含めた資金繰りを考える材料になります。
- 大阪司法書士会|会社を一人で設立したいのですが、どうすればいいですか?司法書士会の公式Q&A。一人設立の可否と手順が簡潔にまとまっています。
- 創業手帳|会社設立の流れがわかる!やることリスト完全版支出のタイミングを工程と対応づけて確認できます。
※ 掲載順は検索結果の並びに準じたもので、優劣を示すものではありません。各サイトの内容および記載金額は、それぞれの運営者の責任において公開されています。