合同会社の初期費用は「6万円」では終わらない。通帳から実際に出ていく額は約8万円
「合同会社は6万円で作れる」——この言い方は正しくもあり、誤解のもとでもあります。6万円というのは登録免許税だけの金額で、実際に通帳から出ていく額はもう少し多いからです。
この記事では、合同会社を一人で作るときに実際に動くお金を、通帳の記帳を追うような形で並べます。金額はすべて2026年8月時点のものです。
実際に通帳から出ていく順に並べる

約8万円。よく見る「6万円」との差は、印鑑代と証明書代と電子定款の代行費です。どれも省けない実費なので、資金計画を立てるときはこの8万円で見ておくほうが安全です。
紙の定款にすると、いくら増えるか

電子定款にしなければ、収入印紙4万円が上乗せされます。合同会社の設立費用は全体が小さいので、4万円の重みは株式会社より大きく感じられます。約8万円が約12万円になり、率にして5割増しです。
登録免許税が6万円で済まないケース

合同会社の登録免許税は「出資額×0.7%、ただし最低6万円」です。つまり出資額が一定を超えると、6万円では収まりません。境目は約857万円です。
| 出資額(資本金) | 登録免許税 | 備考 |
|---|---|---|
| 1円〜857万円程度 | 60,000円 | 最低税額が適用される |
| 1,000万円 | 70,000円 | ただし消費税の免税を失う |
| 2,000万円 | 140,000円 | 均等割も上がる可能性 |
| 5,000万円 | 350,000円 | — |
実務では、出資額を1,000万円未満に抑えるのがほぼ定石です。理由は登録免許税ではなく、消費税。設立時の資本金が1,000万円以上だと、初年度から消費税の課税事業者になってしまいます。
登録免許税を3万円にする方法がある

特定創業支援等事業の証明書を使う
本店を置く市区町村が国の認定を受けていれば、その自治体の創業支援(セミナーや個別相談)を修了することで証明書が交付されます。これを登記申請書に添付すると、登録免許税が半額の30,000円になります。合同会社の設立費用全体が8万円ほどなので、3万円の減額は率にして4割近い効果です。
印鑑にいくらかけるか、で数万円変わる

合同会社の設立費用のうち、唯一「自分で金額を決められる項目」が印鑑代です。登録免許税も証明書代も定額ですが、印鑑だけは5,000円から3万円以上まで幅があります。設立費用全体が8万円ほどなので、ここの選び方は無視できません。
必要なのは、代表社員印(会社実印)、銀行印、角印の3本。登記に必須なのは実印だけですが、銀行印を分けずに実印を法人口座の届出印にすると、実印を持ち出す機会が増えてしまいます。角印は請求書や見積書に押すもので、取引が始まればほぼ確実に必要になります。
素材による価格差は、耐久性の差です。柘(つげ)などの木材系は3本セット5,000円台から。黒水牛や本柘は1万円前後。チタンやオニキスになると3万円を超えます。一人会社で押印の頻度が多くないなら、木材系でまったく問題ありません。10年単位で使い続けることを考えると、真ん中の価格帯を選ぶ人が多い印象です。
サイズには規定があります。会社実印は、印影が辺の長さ1cmを超え3cm以内の正方形に収まる必要があります。既製品のセットを買う場合はほぼ規定内に収まっていますが、デザインにこだわって特注する場合は確認してください。規定外だと印鑑届書が受理されず、登記が止まります。
資本金は「費用」ではない

設立費用を計算していると、資本金も出ていくお金のように感じられます。しかし資本金は会社の口座に入るお金であって、消えるわけではありません。設立後は運転資金として使えます。
本当に消えるのは、登録免許税、印紙代、証明書代、印鑑代、専門家報酬です。合同会社なら、この「消える費用」が8万円前後。それとは別に、事業を回すためのお金として資本金を用意する、という二段構えで考えると計算が合います。
では資本金はいくらにするか。一人の合同会社なら、当面の運転資金3〜6ヶ月分が目安になります。家賃も仕入もない業態なら50〜100万円、機材や在庫が必要なら300万円以上。金額の根拠を説明できる状態にしておくと、法人口座の審査でも創業融資でも通りやすくなります。
設立後、毎年かかる費用も見ておく

初期費用の安さで合同会社を選ぶ人は多いのですが、維持費の差はほとんどありません。会社形態で変わるのは、決算公告の義務と役員任期の管理だけです。
| 毎年かかるもの | 金額の目安 | 形態による差 |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割(赤字でも) | 年70,000円〜 | 差なし |
| 社会保険料(役員1人・報酬20万円) | 年680,000円前後 | 差なし |
| 会計ソフト | 年24,000〜60,000円 | 差なし |
| 税理士顧問+決算申告 | 年300,000〜500,000円 | 差なし |
| 決算公告(官報) | 年70,000円前後 | 合同会社は不要 |
| 役員の改選登記(10年ごと) | 10,000円 | 合同会社は不要 |
年あたりに直すと、合同会社が安いのはせいぜい数千円から1万円程度。維持費の差で会社形態を選ぶ意味はほとんどないということになります。差が出るのは入口の12万円だけです。
設立費用を、いつ・誰が払うのか

細かい話ですが、実務では意外とつまずくポイントです。設立登記が完了するまで、会社の口座は存在しません。したがって登録免許税も印鑑代も証明書代も、すべて代表社員個人が立て替えることになります。
立て替えた分は、設立後に会社から精算できます。会計上は「創立費」——会社設立のためにかかった費用——として計上します。設立後に開業準備で使った費用は「開業費」です。どちらも繰延資産なので、償却するタイミングを自分で選べるという特徴があります。
これが地味に効きます。設立初年度は赤字になりやすく、そこで費用化しても税金は減りません。繰延資産にしておけば、黒字が出た期にまとめて費用化できます。数万円の話ではありますが、制度として使えるものは使っておくに越したことはありません。
注意点は領収書です。会社設立前の支出なので、宛名は個人名で構いません。ただし何のための支出かが分かるようにしておく必要があります。登録免許税は収入印紙を貼った申請書の控えで、印鑑代や証明書代は領収書やレシートで。設立準備用に封筒を1つ用意して、そこに全部入れておくのが確実です。
まとめ

- 「6万円」は登録免許税だけ。実際に出ていくのは約8万円
- 紙の定款を選ぶと収入印紙4万円が上乗せ、約12万円になる
- 出資額857万円までは登録免許税6万円。1,000万円以上は消費税で不利
- 特定創業支援等事業の証明があれば登録免許税は30,000円
- 資本金は費用ではなく、会社に残る運転資金
- 維持費は株式会社とほぼ同じ。安いのは入口だけ
「会社 立ち上げ 初期費用 合同会社」で調べると、6万円・10万円・11万円と数字が分かれます。登録免許税だけを指しているのか、印紙代を含めるのか、印鑑や証明書まで入れているのか。同じ言葉でも指している範囲が違うので、内訳の項目まで見て比べるのが確実です。
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