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会社設立を自分でやる手順。士業に払う5〜10万円は、どの作業への対価なのか

最終更新 2026年8月15日 読了目安 約13分 文字数 約7,506字
会社設立を自分でやる手順。士業に払う5〜10万円は、どの作業への対価なのか
会社設立を司法書士に一括で頼むと、実費とは別に5〜10万円かかります。ではその5〜10万円は、どの作業に対して払っているのか。8つの作業に分解して難易度と所要時間を出し、全部自分でやる/電子定款だけ外注する/一括依頼する、の3パターンで比べました。結論から言えば、資格が必要な作業はひとつもありません。

会社設立を司法書士に一括で頼むと、実費とは別に5〜10万円かかります。この記事は「その5〜10万円は、どの作業に対して払っているのか」を分解して、どこまでなら自分でやれるかを判断するためのものです。

結論から書くと、資格が要る作業はひとつもありません。会社設立の手続きに、法律上「専門家でなければできない」部分は存在しないからです。ただし作業の難易度には差があり、時間対効果が悪い箇所もあります。

払っているのは「資格」ではなく、
調べる時間と、間違えない確度です。

作業を8つに分解して、難易度を並べる

作業を8つに分解して、難易度を並べる

以下は株式会社を一人で作る場合の作業一覧です。難易度は、はじめての人が調べながら進める前提で付けています。

1

基本事項を決める

難易度 中

商号、事業目的、本店、資本金、決算月、機関設計。作業自体は簡単ですが、判断材料がないと決められないという意味で時間がかかります。実質ここが一番の関門です。

所要 3〜10時間外注しても結局自分で決める
2

商号調査・類似商号の確認

難易度 低

法務局の登記情報提供サービス、または窓口の商号調査簿で確認します。同一住所に同一商号がなければ登記できます。

所要 30分自分でやって問題なし
3

定款を作成する

難易度 中

ひな形はいくらでも手に入るので、穴埋め自体は難しくありません。難しいのは事業目的の文言です。許認可が絡む業種では、目的の書き方が要件を満たしていないと後で書き直しになります。

法務局の記載例
公証役場のひな形
設立支援ツール
所要 2〜5時間許認可があるなら要相談
4

電子定款にする(PDF+電子署名)

難易度 高

ここだけ性質が違います。作業自体は単純でも、マイナンバーカード、ICカードリーダー、署名用ソフト、PDF変換環境が必要で、環境構築でつまずく人が多い箇所です。1回きりの設立なら、機材代のほうが外注費を上回ることがあります。

所要 2〜6時間(環境依存)外注費 5,000〜10,000円
5

公証役場で定款認証を受ける

難易度 低

事前に原稿を送ってチェックを受け、指摘どおり直して、当日に受け取る。公証人が間違いを指摘してくれるので、実は難しくありません。時間だけが必要です。合同会社ならこの工程自体がありません。

所要 2〜4日(待ち時間中心)平日に動ける必要あり
6

資本金の払込と証明書の作成

難易度 低

入金して、通帳をコピーして、A4の証明書と綴じて割印。順序さえ間違えなければ迷う要素はありません。定款作成日より前に入金しないこと、これだけです。

所要 1時間自分でやって問題なし
7

登記申請書一式を作る

難易度 中

登記申請書、就任承諾書、印鑑届書、登録免許税納付用台紙。法務局が様式と記載例を公開しているので、書き写す作業に近いです。押印箇所と日付の前後関係で補正になりやすいので、提出前に一度読み返します。

所要 2〜4時間補正が出ると+2〜4日
8

設立後の届出

難易度 中

税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所。書類自体は難しくありませんが、数が多く期限がバラバラで、落としやすい部分です。ここは税理士・社労士の守備範囲でもあります。

所要 3〜6時間青色申告の申請だけは絶対に落とさない
自分で会社設立をやる前に確認する7項目

いくら浮いて、何時間かかるのか

いくら浮いて、何時間かかるのか
自分でやると浮く金額の比較
全部自分でやった場合に浮く金額
50,000〜100,000円
司法書士へ一括依頼した場合の報酬相当分。実費(登録免許税など)は自分でやっても同額かかります。
その代わりに必要な実働
14〜28時間
調べ物と役所往復を含む合計。時給に直すと2,000〜7,000円相当の作業ということになります。

この数字をどう読むかは人によります。本業の時給が明確に高い人なら、外注したほうが合理的です。一方で、これから経理も契約も自分で回すことになる一人会社の代表にとって、設立手続きを一度通しておく経験には、金額に換算しにくい価値もあります。

3つのパターンで比べる

3つのパターンで比べる
全部自分で電子定款だけ外注司法書士に一括
追加費用0円5,000〜10,000円50,000〜100,000円
実働時間14〜28時間10〜18時間3〜6時間
必要な機材ICカードリーダー等不要不要
期間の目安2週間〜1ヶ月2〜3週間2〜4週間
補正リスクやや高いやや高い低い
向く人調べ物が苦にならない/時間に余裕がある環境構築だけ避けたい/それ以外は自力で本業を止めたくない/許認可が絡む
自分でやる場合の現実的な日程

電子定款の壁を、もう少し具体的に

電子定款の壁を、もう少し具体的に

自分でやるかどうかの分かれ目は、実質ここに集約されます。ほかの工程は「調べれば分かる」のに対して、電子定款だけは手元の環境が揃っていないと物理的に進めないからです。何が必要なのかを整理しておきます。

まず、定款をWordなどで作成し、PDFに変換します。次に、そのPDFに電子署名を付与します。この署名は、マイナンバーカードに格納されている署名用電子証明書を使って行うのが一般的です。読み取りにはICカードリーダー(対応スマートフォンでも可)が必要で、署名を付与するソフトウェアも別途用意します。加えて、公証役場へ送信するための手続き用ソフトの設定も必要になります。

手順そのものは10ステップ程度ですが、途中で「ドライバが認識しない」「証明書のパスワードを忘れた」「PDFの形式が受け付けられない」といった、本題とまったく関係のない障害が発生します。2時間で終わる人もいれば、丸一日つぶす人もいるのがこの工程です。

費用の観点で見ると、ICカードリーダーは3,000円前後で買えます。すでにマイナンバーカードを持っていて、対応スマートフォンで読み取れるなら追加費用はゼロです。一方、電子定款の作成だけを行政書士に依頼した場合の相場は5,000〜10,000円。金額だけならほぼ互角なので、判断材料は「その時間を使うかどうか」に絞られます。

なお、紙の定款という選択肢もあります。収入印紙4万円がかかる代わりに、機材も設定も一切不要です。設立を急いでいて、電子定款の環境構築で数日失うくらいなら、4万円払って紙で通すという判断も現実にはあります。ただし合同会社の場合、設立費用全体が7〜9万円なので、そこに4万円は重く感じるはずです。

自分でやると決めたら、先に潰しておくこと

自分でやると決めたら、先に潰しておくこと
登記申請後の補正でつまずきやすいという注意

補正になりやすい3つの型

法務局から連絡が来るのは、たいてい次のどれかです。書類を出す前に、この3点だけ見直してください。

  1. 押印漏れ・印影の不一致——就任承諾書の個人印と印鑑証明書の印影が違う、割印がない。
  2. 日付の前後関係——資本金の払込日が定款作成日より前になっている、就任承諾日が設立日より後になっている。
  3. 金額の不一致——定款の資本金額、払込証明書の額、登記申請書の額が一致していない。

許認可が絡むなら、目的の文言だけは先に確認する

建設業、人材紹介・派遣、古物商、飲食、運送、旅行、宅建など、許認可が必要な業種では定款の事業目的の書き方が許認可の要件になります。設立してから「この目的では許可が下りません」と言われると、変更登記で3万円と2週間が飛びます。該当する業種なら、行政書士に目的の文言だけ確認してもらうのが安上がりです。

設立後の届出は、自力の落とし穴になりやすい

設立登記までは「終わり」がはっきりしているので、多くの人は完走できます。問題は登記が終わったあとです。登記完了という達成感で気が緩み、届出の期限を過ぎてしまう例が実際にあります。

特に影響が大きいのが青色申告の承認申請書です。期限は「設立から3ヶ月を経過した日」と「初年度の事業年度終了日」のうち早いほうの前日まで。設立初年度は赤字になることが多く、青色であればその赤字を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できます。1日遅れただけで初年度は白色となり、繰越の権利が消えます。金額に直すと数十万円から百万円単位の差になり得ます。

次に短いのが社会保険の新規適用届で、事実発生から5日以内。役員報酬をゼロにするなら加入義務は生じませんが、1円でも報酬を出すなら加入対象です。「一人だから関係ない」という誤解が最も多い箇所でもあります。

これらは自分でやること自体は可能です。ただし期限管理をカレンダーに落としておかないと、まず落とします。登記申請日が確定した時点で、設立日+5日、+1ヶ月、+2ヶ月、+3ヶ月の4点を予定に入れてしまうのが確実です。

書類作成までは自動化されますが、公証役場と法務局への提出は自分で行います。また電子定款の署名部分は、ツール側の提携行政書士が代行する形が一般的です。「全部自分で」と「一部外注」の中間と考えると実態に近くなります。

定款認証はウェブ会議に対応しており、登記もオンライン申請が可能です。理屈のうえでは平日に一度も外出せずに完了できます。ただし補正の対応や証明書の取得で窓口に行く場面が出ることはあるので、まったく動けないなら一括依頼が無難です。

0円なのは代行手数料です。登録免許税などの実費は必ずかかります。多くは税理士の顧問契約や会計ソフトの年間契約とセットになっており、その収益で手数料分を賄う設計です。どのみち税理士を頼む予定があるなら合理的で、頼む予定がないなら条件をよく読む必要があります。

自力でやるときに、実際に使える情報源

自力でやるときに、実際に使える情報源

自分でやると決めたなら、情報源を絞り込むことが最初の作業になります。会社設立の解説記事は無数にありますが、書式や手数料の一次情報を持っているのは限られた場所だけです。

登記の書式と記載例は法務局・法務省が公開しています。設立登記申請書、就任承諾書、払込証明書、印鑑届書。どれも様式と記入例がダウンロードできる形で用意されているので、解説記事を読むより先にこれを手に入れるほうが早いです。記事はあくまで「その様式をどう埋めるか」の補助として使います。

定款の手数料と必要書類は、日本公証人連合会と管轄の公証役場が一次情報です。手数料は改定されることがあり、解説記事の数字が古いまま残っている例が実際にあります。金額を確定させたいときは、必ず公証役場側の情報にあたってください。管轄の公証役場によって事前チェックの受付方法(メール、FAX、持参)が違う点も、直接確認したほうが確実です。

設立後の届出は、国税庁と日本年金機構、それに本店所在地の自治体です。特に自治体への法人設立届出書は、提出期限が自治体ごとに違います。15日以内のところもあれば1ヶ月以内のところもあるので、「都道府県名+法人設立届出書」で自治体のサイトを直接見るのが最短です。

加えて、無料で相談できる公的な窓口もあります。商工会議所の創業相談、各都道府県のよろず支援拠点、日本政策金融公庫の創業相談窓口。書類の書き方そのものを教えてもらえるわけではありませんが、事業計画や資金計画について第三者の目を入れる場としては使えます。設立手続きと並行して融資を検討しているなら、早い段階で一度話しておくと段取りが組みやすくなります。

まとめ

まとめ
  • 会社設立に、資格が必要な作業はひとつもない
  • 浮くのは5〜10万円、代わりに必要なのは14〜28時間
  • 難所は「電子定款の環境構築」と「基本事項を決めること」の2つ
  • 電子定款だけ外注する中間案が、費用対効果ではもっとも良いことが多い
  • 補正の原因は押印漏れ・日付の前後・金額不一致の3つに集中する
  • 許認可が絡む業種なら、事業目的の文言だけは先に専門家に確認する
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください 検索キーワード:会社 立ち上げ 手順 自分で / 20 サイト

「会社 立ち上げ 手順 自分で」で検索すると、自力設立を勧める記事と、専門家依頼を勧める記事が混在します。運営者の立場(会計ソフト事業者・士業・登記サービス)で結論が変わりやすいテーマなので、どの立場から書かれているかを意識しながら読むと判断しやすくなります。

  1. 弥生|会社設立手続きは自分でできる?かかる費用や必要な手続きを解説自分でやる場合に浮く金額と、その代わりに増える手間を具体的に扱っています。
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  10. 法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について登記申請書の様式と記載例の一次情報。自分でやるなら必ず参照する場所です。
  11. 日本公証人連合会|定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか定款認証の公式Q&A。手数料と必要書類の一次情報です。
  12. J-Net21(中小機構)|株式会社の設立手続き公的支援機関の起業マニュアル。制度説明が中立的です。
  13. freee|会社設立の手続きを司法書士へ依頼するには?委託できる範囲や費用外注する場合に何をどこまで任せられるかを整理しています。
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著者:合同会社commit / 合同会社FIELD 共同編集部

本記事は、合同会社commit(コンサルティング/Webマーケティング/Web制作)と 合同会社FIELD(事業グロース支援/人材/ITスクール)の共同編集部が制作しています。両社ともに合同会社として設立・運営しており、一人・少人数での法人設立と設立後の実務を、自らの経験も踏まえて扱っています。

記事は、法務省・法務局・国税庁・日本年金機構・中小企業庁・日本公証人連合会などの一次情報を確認したうえで作成し、合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら編集しています。参照元は各セクションの末尾に明示しています。ただし制度・手数料は改正されるため、手続きの際は必ず所管官庁の最新情報をご確認ください。個別具体的な判断については、税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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