一人で会社を立ち上げる手順を9工程に分けて。決めることから登記後の届出まで全部
会社を一人で立ち上げると決めたとき、いちばん困るのは「難しいこと」ではありません。やることが多すぎて、どれを先にやればいいのか分からないという点です。定款、登記、印鑑、資本金、届出——単語は聞いたことがあっても、順番と締切がつながっていない。この記事では、その順番だけを、実際に手を動かす単位で並べました。
登場する数字は2026年8月時点の制度に基づいています。特に定款認証の手数料は2024年12月に改定が入っており、一人で作る小さな会社ほど安くなる方向に変わりました。古い記事の「4万円」「5万円」という記載をそのまま信じると、余計に払うことになります。
作業のかたまり
株式会社を作る実費
現実的な期間
(設立後で最短)
まず全体像:一人で会社を作る工程は9つに分かれる

会社設立の解説は「10ステップ」「7ステップ」と数え方がバラバラですが、実際に手を動かす単位で切ると9つになります。この9つのうち、つまずくのはほぼ1番目と3番目です。残りは書式どおりに埋めれば終わります。
工程1〜3|書類を書き始める前に終わらせること

会社の基本事項を9項目まとめて決める
定款は、決まったことを書き写す作業です。決まっていないものは書けません。ここで決める項目は次の9つです。
- 商号でつまずく人へ
- 使える文字は漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・アラビア数字と、一部の記号(& ' , - . ・)だけです。記号は先頭と末尾に置けません。同じ住所に同じ商号の会社があると登記できないので、法務局の「商号調査」で先に確認しておきます。
- 事業目的でつまずく人へ
- 「今やる事業」と「2〜3年以内にやるかもしれない事業」を書き、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れます。あとから足すには変更登記で3万円かかるので、この段階で広めに取っておくのが定石です。ただし関連性のない事業を10も20も並べると、法人口座の審査で実体を疑われます。
会社の印鑑を発注する
登記申請の時点で会社実印が必要です。ネットの印章店なら中2〜5日で届きますが、混み合う時期は1週間かかることもあります。ここを最後に回すと、設立希望日がずれます。
| 種類 | 使う場面 | 作るべきか |
|---|---|---|
| 代表者印(実印) | 登記申請、重要な契約書 | 必須 |
| 銀行印 | 法人口座の届出印 | 実印と兼ねられるが分けたほうが安全 |
| 角印(社印) | 請求書・見積書 | 取引が始まると結局要る |
定款を作成する
定款は会社のルールブックです。書き方を一から考える必要はなく、法務局や公証役場が公開しているひな形に、工程1で決めた内容を入れていけば形になります。
問題は紙で作るか、電子で作るかです。紙の定款には収入印紙4万円を貼る義務がありますが、PDFに電子署名した電子定款なら印紙は不要です。
工程4〜7|設立日が決まる、いちばん動きの速い区間

公証役場で定款認証を受ける(株式会社のみ)
株式会社は、作った定款を公証人に認証してもらう必要があります。合同会社は不要この工程がまるごと無いぶん、合同会社は安く早く作れます。
2024年12月の改定で、次の4条件をすべて満たすと手数料が15,000円になりました。一人で小さく作る人はほぼ当てはまります。
- 資本金の額が100万円未満であること
- 発起人が全員個人で、3人以下であること
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款にあること
- 定款に取締役会を置く旨の記載がないこと
資本金を払い込む
会社はまだ存在しないので、法人口座はありません。発起人(あなた)個人の口座に、自分で資本金を振り込みます。通帳の表紙、1ページ目、入金の記帳ページをコピーして「払込証明書」に綴じます。
登記申請書類を一式そろえる
一人で発起設立する株式会社の場合、必要なのは概ね次の書類です。合同会社なら定款認証関連が消え、就任承諾書のかわりに代表社員の就任承諾書になります。
- ✓登記申請書
- ✓登録免許税納付用台紙(収入印紙を貼る)
- ✓認証済みの定款
- ✓払込証明書+通帳コピー
- ✓設立時取締役の就任承諾書
- ✓取締役の印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
- ✓印鑑届書
法務局へ申請する — この日が設立日になる
登記を申請した日が、会社の設立日として登記簿に載ります。登記が完了した日ではありません。誕生日にしたい、キリのいい日にしたい、という希望があるなら、その日に窓口またはオンラインで申請します。
工程8〜9|登記が終わってからが本番

登記の完了までは中7〜10日ほど。この間、会社は登記簿上は存在していますが、証明書が出ないので口座も作れません。完了したら法務局で印鑑カードを受け取り、登記事項証明書と印鑑証明書を取得します。届出や口座開設で何度も使うので、証明書は3通ほど取っておくと往復せずに済みます。
健康保険・厚生年金保険の新規適用届は、事実発生から5日以内。社長ひとりの会社でも、役員報酬を出す以上は加入義務があります。「従業員がいないから関係ない」と考えて放置すると、後から遡って請求されます。
青色申告の承認申請だけは、絶対に落とさない
設立初年度は赤字になることが多く、その赤字を翌期以降の黒字と相殺できるのが青色申告です。申請期限は「設立から3ヶ月を経過した日」と「初年度の事業年度終了日」のうち早いほうの前日まで。1日でも過ぎると初年度は白色申告になり、初年度の赤字を持ち越せません。
結局いくらかかるのか

電子定款+認証手数料の特例が使える条件なら、株式会社でも17万円台に収まります。合同会社は定款認証そのものが不要で登録免許税も6万円からなので、7万円前後です。ここに印鑑代と証明書代が乗ります。
一人会社にするか、個人事業のままか

手順を全部読んだうえで「やっぱり個人事業でいいのでは」と思うのは、まっとうな反応です。判断材料になる差だけ並べます。
数字だけで見るなら、利益が800万円前後を超えたあたりから法人のほうが手取りが残りやすくなります。ただし一人会社は、赤字でも法人住民税の均等割が年7万円、社会保険料が最低でも年20万円台から発生します。固定費が年30万円ほど増えるという前提で考えてください。
株式会社ではなく合同会社にすると、どこが省けるのか

一人で作るなら合同会社を検討する価値があります。省けるのは工程4(定款認証)まるごとと、登録免許税の差額9万円です。手続きの工程数でいえば9つが7つになります。
逆に、合同会社を選ぶと詰まる場面もあります。取引先の与信基準に「株式会社であること」が入っている業界、上場や第三者からの出資を将来視野に入れている場合、それから「合同会社って何ですか」と毎回説明する手間です。後から株式会社へ組織変更もできますが、そのときは10万円前後の登記費用がまたかかります。
自分でやるか、代行に出すか

設立代行の相場は、株式会社で報酬3〜10万円、合同会社で2〜7万円あたりです。ここに実費(登録免許税など)が別途乗ります。一方で「手数料0円」を掲げるサービスもあり、これは税理士の顧問契約や会計ソフトの年間契約とセットになっている形式がほとんどです。
| 選択肢 | 追加費用 | かかる日数 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 全部自分でやる | 0円 | 2〜3週間 | 平日に動ける/調べ物が苦にならない |
| 電子定款だけ外注 | 5,000〜10,000円 | 2〜3週間 | ICカードリーダーを買いたくない |
| 司法書士に一括 | 5〜10万円 | 2〜4週間 | 本業を止めたくない/許認可が絡む |
| 0円代行サービス | 実質は顧問料 | 1〜3週間 | どのみち税理士を頼む予定がある |
まとめ:迷ったら工程1に戻る

- 手続きは9工程。難所は「決める」工程1と「定款を書く」工程3だけ
- 設立日=登記を申請した日。土日祝は指定できない
- 一人・資本金100万円未満なら、定款認証は15,000円で済む
- 電子定款にすれば収入印紙4万円が不要になる
- 社会保険は設立から5日以内、青色申告の申請は3ヶ月以内が期限
- 法人化で増える固定費は年30万円前後を見ておく
手が止まったときは、書類ではなく工程1の9項目に戻ってください。書けないのは、たいてい決まっていないからです。
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- 会社設立GOAL|一人で会社を作る手順を解説!費用や必要書類は?資本金1円から設立できるようになった背景と、実際にいくら入れるべきかを扱っています。
- 弥生|1人で会社を作る手順は?個人会社と個人事業主の違いや費用について解説会計ソフト事業者による起業お役立ち情報。設立後の経理まで視野に入れた内容です。
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- ベンチャーサポート|会社設立を司法書士に依頼すべき人・自分で進めてよい人依頼すべきかどうかの判断基準を、費用相場とあわせて示している記事です。
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- マネーフォワード クラウド会社設立|会社設立の流れを解説!株式会社設立の手順株式会社に絞った流れ・必要書類・費用をまとめた基本記事です。
- 三井住友銀行|会社設立とは?必要な手続と費用、設立までの流れを詳しく解説銀行の法人口座ガイド内の解説。口座開設との接続を意識した構成です。
- 弥生|会社設立の方法・流れを詳しく解説!株式会社設立や法人設立に必要な手続き設立方法を工程順に追える構成。書類名の対応関係が分かりやすい記事です。
- 法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について登記を所管する省庁の公式ページ。申請書の様式や記載例の一次情報はここです。
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