合同会社の立ち上げ手順は7工程。公証役場に行かない分だけ、費用も日数も落ちます
この記事でいちばん言いたいこと
合同会社の設立手順は、株式会社から「定款認証」という工程をまるごと抜いたものです。抜けるのは工程だけでなく、そこに乗っていた手数料と日数も一緒。結果として、費用は約12万円、期間は約1週間、株式会社より軽くなります。
まず、どの工程が消えるのかを見る

株式会社の手順と並べると、違いが一目で分かります。以下は株式会社の工程順に並べたもので、グレーの取り消し線が合同会社では不要になる部分です。
基本事項を決める
商号、事業目的、本店所在地、出資額、事業年度、代表社員。株式会社の「機関設計」に相当する検討がないぶん、決める項目は少なめです。
会社の印鑑を発注する
代表社員印(会社実印)。サイズ規定は株式会社と同じで、辺の長さが1cm超3cm以内です。登記申請日に手元にないと進めません。
定款を作成する認証不要ぶん自由度が高い
公証人のチェックを受けないため、ひな形をもとに自分の会社の実態に合わせて書けます。ただし絶対的記載事項(目的・商号・本店所在地・社員の氏名住所・社員全員が有限責任である旨・出資の目的と価額)は必須です。
公証役場で定款認証を受ける
合同会社にはこの工程がありません。予約、事前チェックのやりとり、当日の往復、手数料15,000〜50,000円が、まるごと発生しません。
出資金を払い込む
代表社員個人の口座に入金し、通帳をコピーして払込証明書を作ります。ここは株式会社とほぼ同じ手順です。
登記申請書類をそろえる
登記申請書、定款、払込証明書、代表社員の就任承諾書、代表社員の印鑑証明書、印鑑届書、資本金の額の計上に関する証明書など。
法務局へ申請する
登録免許税は出資額 × 0.7%、最低60,000円。申請した日が設立日になります。
登記完了、届出へ
印鑑カードと登記事項証明書を取得し、税務署・都道府県税事務所・市町村・年金事務所へ届け出ます。ここは形態に関わらず同じです。
費用は本当に安いのか

電子定款にすれば実費は6万円台。紙の定款だと収入印紙4万円が乗って10万円台になります。この4万円は形態に関係なくかかるので、合同会社でも電子定款の検討価値は同じだけあります。
安さの代わりに、何を引き受けるのか

合同会社が安いのは、制度として簡素だからです。簡素さは利点にも欠点にもなります。実際に効いてくる差を4つ挙げます。
改選登記の手間も、忘れて過料を受けるリスクもありません。一人会社では地味に効きます。
「合同会社って何ですか」と聞かれる場面は、いまだにあります。BtoCで屋号を前面に出すなら影響は小さめです。
株式会社にある決算公告の義務がありません。官報掲載料が毎年浮きます。
持分の譲渡には原則として社員全員の同意が要るため、外部出資の受け入れには向きません。
出資比率と無関係に、定款で配分を決められます。共同で作る場合に使える設計です。
合同会社のままでは上場できません。目指すなら組織変更が前提になります。
株主総会という枠組みがないため、手続き上の会議体を回す必要がありません。
大手企業の新規取引審査で、株式会社を条件にしている例があります。業界差が大きい部分です。
合同会社ならではの用語に、先に慣れておく

株式会社の記事を読んでから合同会社の手続きに入ると、用語が置き換わっていて戸惑います。対応関係を先に押さえておくと、書類作成が速くなります。
| 株式会社 | 合同会社 | 補足 |
|---|---|---|
| 株主 | 社員 | 従業員のことではありません。出資者を指します。 |
| 取締役 | 業務執行社員 | 業務を執行する社員。定款で限定できます。 |
| 代表取締役 | 代表社員 | 登記される代表者。一人なら自動的にこれです。 |
| 資本金 | 資本金 | 呼び方は同じ。ただし出資は「持分」で表されます。 |
| 株式 | 持分 | 譲渡には原則として社員全員の承諾が必要です。 |
| 株主総会 | 社員総会(任意) | 法定の機関ではなく、定款で定めれば置けます。 |
ケース別に、合同会社で進めていいのかを判断する

会社形態の比較記事は一般論になりがちなので、相談として実際によく出てくる形に落として考えます。前提は「一人で始める」「当面は自分以外に出資者を入れない」です。
認証がないぶん、定款は自分で詰める必要がある

公証人のチェックが入らないというのは、裏返すと誤りに気づく機会がひとつ減るということでもあります。合同会社の定款で、あとから困りやすい条項を挙げておきます。
定款で限定しない場合、社員全員が業務執行社員になります。将来家族や共同経営者を社員に入れる可能性があるなら、この時点で限定しておくと、権限の線引きで揉めません。
合同会社は出資比率と分配割合を切り離せます。書かなければ出資比率どおりです。「お金を出す人」と「働く人」が違う構成なら、ここを設計しないと不満の種になります。
原則は社員全員の同意です。一人ならいま問題になりませんが、増やす予定があるなら、加入時の手続きを定款で軽くしておくと後の変更登記が減ります。
設立日から最も遠い月末にすると、初年度を長く使えます。株式会社と考え方は同じですが、認証を挟まないぶん見直す機会がないので、書く前に決めておきます。
設立が終わったあと、合同会社でも同じようにやること

手続きの軽さは設立時の話であって、設立後は株式会社とほとんど変わりません。税金も社会保険も、会社形態による違いはありません。ここを「合同会社だから軽いはず」と誤解していると、初年度に慌てます。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 法人税 | 課税所得に応じた税率 | 同じ |
| 法人住民税の均等割 | 赤字でも年7万円〜 | 同じ |
| 消費税の免税期間 | 資本金1,000万円未満で2期 | 同じ |
| 社会保険の加入義務 | 代表者1人でも加入 | 同じ |
| 決算・申告 | 毎期必要 | 同じ |
| 決算公告 | 義務あり | 義務なし |
| 役員の任期 | 最長10年で改選登記 | 任期なし |
あとから株式会社に変えられるのか

変えられます。ただし「登記を1本入れれば終わり」ではありません。組織変更計画の作成、債権者保護手続き(官報公告と個別催告)、そして登記。官報公告に約4万円、公告期間として最低1ヶ月が必要で、登記費用も別途かかります。総額で10万円前後、期間で1ヶ月半ほど見ておくのが現実的です。
商号を「合同会社」でどう見せるか

細かい話に見えて、設立後に地味に効いてくるのが商号の表記です。合同会社は、社名の前に付ける「前株」と、後ろに付ける「後株」のどちらも選べます。登記上はどちらでも構いませんが、一度決めると変更には変更登記が必要になります。
実務でよく相談されるのは、英語表記をどうするかです。合同会社の英語表記は一般に「LLC」が使われます。ただし日本の合同会社と米国のLLCは制度として別物なので、海外の取引先と契約する場合には、日本法上の会社形態であることを説明する必要が出てきます。名刺やウェブサイトでの表記に「Godo Kaisha」を併記している会社もあります。
もうひとつ、屋号やサービス名を前面に出す運用も広く行われています。登記上の商号は「合同会社○○」でも、対外的にはサービス名で認知されるという形です。BtoCのサービスであれば、会社形態が話題になる場面はそもそも多くありません。逆にBtoBで、請求書や契約書に商号が並ぶ機会が多い業態では、形態が目に触れる頻度が上がります。この違いを踏まえて判断すると、迷いが減ります。
なお、商号に使える文字の制限は株式会社とまったく同じです。漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・アラビア数字と、一部の符号(& ' , - . ・)が使えます。符号は先頭と末尾には置けません。そして「合同会社」の文字を必ず商号のどこかに含める必要があります。「株式会社」や「有限会社」を混ぜることはできません。
まとめ

- 工程は7つ。株式会社から定款認証がまるごと消える
- 登録免許税は最低60,000円。株式会社との差は90,000円
- 電子定款なら実費6万円台、紙定款だと印紙代4万円が乗る
- 役員任期も決算公告もないので、維持の手間が軽い
- 外部出資と上場を視野に入れるなら、株式会社が前提
- 後から株式会社へ変更は可能。ただし10万円と1ヶ月半ほどかかる
「会社 立ち上げ 手順 合同会社」で検索すると、合同会社に絞った解説から、株式会社と並べて比較する記事まで幅があります。設立費用の書き方(登録免許税だけか、印鑑代まで含めるか)が記事ごとに違うので、金額を比べるときは前提条件を確認しながら読むと混乱しません。
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