株式会社を立ち上げる手順7工程。合同会社と分かれるのは定款認証からです
株式会社と合同会社、どちらの手順も前半は同じです。分かれるのは4工程目の「定款認証」から。株式会社にだけ課される工程と費用がここで発生し、金額にして12万円、日数にして4〜6日の差になります。
この記事では、株式会社を選んだ場合に何をどの順で踏むのかを、株式会社固有の論点(絶対的記載事項、機関設計、役員任期、登録免許税の計算)に重点を置いて説明します。
株式会社の設立は7工程。全体像から

なお、ここで扱うのは発起設立(発起人が設立時発行株式を全部引き受ける方式)です。一人で作る場合はほぼこの方式になります。もうひとつ募集設立という方式がありますが、外部から出資を募る形なので手続きが重く、設立時に使う人はまずいません。
工程を順に見ていく

基本事項を決める
商号、事業目的、本店所在地、資本金、発行可能株式総数、設立時発行株式数、機関設計、事業年度、設立日。ここが決まらないと定款の1行目から書けません。
株式会社に固有の論点は機関設計です。一人で作るなら「取締役1名・取締役会なし・監査役なし」がもっとも軽い構成で、定款認証手数料の特例条件にも合致します。取締役会を置くと取締役3名+監査役1名が必要になり、一人会社では成立しません。
定款を作成する
定款には、これを書かないと定款そのものが無効になる項目が5つあります。会社法27条の絶対的記載事項です。
このほかに、書いておかないと効力が生じない「相対的記載事項」(現物出資、株式の譲渡制限、役員任期の伸長など)があります。一人会社で必ず入れておきたいのは株式の譲渡制限です。これを入れることで非公開会社となり、役員任期を最長10年まで伸ばせます。
公証役場で定款認証を受ける
作った定款を、本店所在地を管轄する法務局に所属する公証人に認証してもらいます。いきなり窓口に行くのではなく、先にメールやFAXで原稿を送って事前チェックを受けるのが一般的な流れです。修正のやりとりで1〜3日かかります。
2024年12月の改定で、次の4条件をすべて満たす会社は手数料が15,000円になりました。一人で、資本金を小さく、取締役会を置かずに作るなら、そのまま当てはまります。
- 資本金の額が100万円未満
- 発起人が全員自然人で、3人以下
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載がある
- 取締役会を置く旨の記載がない
資本金を払い込む
会社はまだ登記されていないため法人口座がありません。発起人個人の口座に、自分で資本金を振り込みます。順序の制約が厳しく、ここを間違えるとやり直しになります。
定款の作成日(認証日)以降の日付で入金 → 通帳をコピー → 払込証明書を作成
もともと残高があるので、そのまま「資本金あり」として提出 → 入金の記録がなく通らない
通帳のコピーは、表紙・見開き1ページ目(支店名や口座番号が載っている面)・入金が記帳されたページの3か所です。ネット銀行の場合は、口座名義・番号・入金明細が分かる画面を印刷します。
登記申請書類をそろえる
一人発起設立で必要になる書類は、登記申請書、登録免許税納付用台紙、認証済み定款、払込証明書、設立時取締役の就任承諾書、取締役の印鑑証明書、印鑑届書。現物出資がある場合は調査報告書と財産引継書が追加されます。
登録免許税は資本金の額 × 0.7%で、これが15万円に満たない場合は15万円です。つまり資本金が約2,143万円を超えるまでは一律15万円と考えて構いません。
法務局へ申請する
本店所在地を管轄する法務局へ提出します。申請した日が設立日として登記簿に載ります。窓口持参、郵送、オンライン申請のいずれでも可能ですが、郵送は到着日が申請日になるため、設立日を狙うなら窓口かオンラインが確実です。
登記完了、そして届出へ
完了したら印鑑カードを受け取り、登記事項証明書と会社の印鑑証明書を取得します。ここから税務署・都道府県税事務所・市町村・年金事務所への届出が始まり、並行して法人口座の開設を申し込みます。
費用の全体像

紙の定款・資本金300万円という条件だと合計24万円ほど。ここから電子定款にすれば40,000円、資本金を100万円未満にして特例を使えば35,000円が消えます。両方効かせると165,000円台まで下がります。
| 条件 | 合計費用 | 差額 |
|---|---|---|
| 紙定款/資本金300万円 | 約244,000円 | 基準 |
| 電子定款/資本金300万円 | 約204,000円 | −40,000円 |
| 電子定款/資本金99万円(特例) | 約167,000円 | −77,000円 |
設立後に効いてくる、株式会社だけの宿題

役員の任期と改選登記
取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。一人会社なら10年にしておくのが定石です。ただし任期が来たら、たとえ同じ人が続けるとしても改選(重任)の登記が必要で、登録免許税が1万円かかります。ここを忘れると過料の対象になります。
決算公告
株式会社には決算公告の義務があります。官報に載せると毎年7万円前後。実際には出していない会社が多数ですが、法令上は義務です。定款で公告方法を「電子公告」にして自社サイトに掲載すれば、費用はかかりません。設立時に決めておくと後が楽です。
そもそも株式会社にすべきか、を工程の前に一度

手順を読み進めるうちに「この12万円と6日は、何に対して払っているのか」と思ったなら、いったん立ち止まる価値があります。株式会社を選ぶ理由がはっきりしている人と、なんとなく選んでいる人では、後の満足度がかなり違います。
迷ったときの目安をひとつ。3年以内に自分以外の株主が入る可能性があるかどうか。ここが「ない」なら、合同会社で始めて必要になったときに組織変更する道も現実的です。逆に「ある」なら、最初から株式会社にしたほうが、あとの手間と費用を確実に下回ります。
資本金をいくらにするか、3つの節目で決める

資本金は1円でも設立できますが、実務では3つの節目を意識して決めます。それぞれ性質の違う効果があり、金額の大小ではなく「どの線を越えるか」で結果が変わります。
もうひとつ、金額そのものが見られる場面もあります。法人口座の審査と創業融資の審査です。資本金1円の会社が口座開設で止まる例は珍しくなく、融資でも自己資金の裏づけとして資本金が見られます。この観点からは、当面の運転資金3〜6ヶ月分を入れておくのが無難です。
まとめ

「会社 立ち上げ 手順 株式会社」で検索すると、金融機関・会計ソフト各社・士業事務所・公的機関がそれぞれの立場で解説しています。特に費用の内訳と定款認証まわりは記事によって前提条件が違うので、複数を見比べたほうが自分の条件に合う数字が見つかります。
- マネーフォワード クラウド会社設立|会社設立の流れを解説!株式会社設立の手順、必要書類、費用もまるわかり株式会社に絞って流れ・書類・費用を通しで解説。設立ツールの提供元による記事です。
- 三井住友銀行|会社設立とは?必要な手続と費用、設立までの流れを詳しく解説商業登記という制度の説明から入る構成。法人口座の開設と接続して読めます。
- 弥生|会社設立の方法・流れを詳しく解説!株式会社設立や法人設立に必要な手続き工程順に必要書類が対応づけられていて、書類の抜けを確認しやすい記事です。
- freee|会社設立の流れと手続き方法を徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点知識ゼロの読者を想定した基礎編。用語の説明が丁寧です。
- 法務省|株式会社の設立手続(発起設立)について発起設立の申請書様式と記載例の一次情報。書式は必ずここで確認してください。
- 日本公証人連合会|定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか定款認証手数料の公式Q&A。金額の根拠を確かめたいときの一次情報です。
- J-Net21(中小機構)|株式会社の設立手続き公的支援機関の起業マニュアル。制度の説明が中立的です。
- RSM汐留パートナーズ司法書士法人|株式会社の定款認証に係る公証人手数料の一部改定2024年12月の手数料改定を、司法書士の視点で解説した記事です。
- 司法書士法人永田町事務所|定款認証の手数料が半額になりました。令和6年12月改定のポイント半額特例の4条件を具体的に整理しています。該当するか判定するのに便利です。
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