合同会社のデメリットを、実際に困る順に7つ。知名度は4番目です
合同会社のデメリットとして、まず挙げられるのは「知名度が低い」「信用されにくい」です。ただし、これを最初に持ってくるのは実務の順序としては正しくありません。
知名度の問題は、事業内容と取引先次第で影響がゼロになることもあります。一方で、設計を間違えると取り返しがつかないデメリットが別にあります。この記事では、実際に困る順に並べました。
実害の大きい順に7つ

株式による資金調達ができない
実害 大合同会社には株式がありません。出資を受けるには社員として迎え入れることになり、持分の譲渡には原則として社員全員の同意が必要です。投資家の側から見ると、退出(イグジット)の設計が組みにくい構造になっています。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家との投資契約は、株式会社を前提に組み立てられています。優先株、種類株、ストックオプション——これらはすべて株式があってこその仕組みです。
社員間の対立で、経営が止まる
実害 大合同会社の重要な決定には、原則として総社員の同意が必要です。株式会社のように「議決権の過半数」で決まる仕組みではありません。
社員が2人で、出資比率が50%ずつだった場合。意見が割れると、何も決められなくなります。定款の変更も、新しい社員の加入も、代表社員の変更も、すべて止まります。これがデッドロックと呼ばれる状態です。
上場できない
実害 大合同会社のままで株式市場に上場することはできません。目指すなら、その前に株式会社へ組織変更する必要があります。
とはいえ、これが実害になる会社は限られます。上場を具体的に目指していないなら、影響はゼロです。デメリットとして挙げられることは多いのですが、自分に関係があるかどうかは冷静に判断してください。
知名度・信用度が低いとされる
実害 中もっともよく挙げられるデメリットですが、影響の大きさは業界と取引先によって極端に変わります。
影響が出やすいのは、大企業の新規取引審査、伝統的な業界での慣行、そして「合同会社って何ですか」という質問に毎回答える手間です。逆に、BtoCのサービスや、発注側が法人格の有無しか見ていない業態では、ほとんど問題になりません。
決算公告の義務がないため外部から経営実態が見えにくい、という点を理由に挙げる解説もあります。ただし実務では、取引先が官報の決算公告を確認して与信判断をする場面は多くありません。
持分の譲渡に、全社員の同意が必要
実害 中自分の持分を誰かに譲るには、他の社員全員の承諾が要ります。株式会社の株式であれば、譲渡制限がある非公開会社でも承認機関の決議で足りるため、合同会社のほうが硬い仕組みです。
事業承継の場面でも同じです。子どもに引き継ぐ、従業員に譲る、第三者に売却する——いずれも社員全員の同意が前提になります。一人の会社なら当面は関係ありませんが、社員を増やすなら考えておく論点です。
代表社員の変更に手間がかかる
実害 中代表社員を定款で定めている場合、変更するには定款変更が必要です。定款変更には総社員の同意が要ります。株式会社の代表取締役なら、取締役会や株主総会の決議で交代できるのと比べると、重い手続きです。
また、代表社員が退社する場合、その人が持っていた持分の払い戻しの問題も同時に発生します。金額の算定と資金の準備が必要になるため、事前に定款で扱いを決めておかないと揉めます。
求人での見え方
実害 小採用の場面で会社形態が理由になることは、実際にはあまりありません。求職者が見ているのは、事業内容、待遇、働き方、そして会社が何を公開しているかです。
ただし、まったく影響がないとも言い切れません。会社について何も知らない状態で求人票だけを見た場合、「合同会社」という表記が判断材料のひとつになる可能性はあります。影響を小さくしたいなら、事業内容と実績を丁寧に開示するほうが効果的です。
一人で作るなら、消えるデメリットがある

7つのうち、2位・5位・6位は社員が複数いることが前提のデメリットです。一人で作るなら、これらは当面発生しません。
総社員の同意が必要といっても、社員が自分だけなら自分の判断と同義です。持分を譲る相手も、代表社員を交代する理由も、当面はありません。一人の合同会社では、実質的に効いてくるデメリットは1位・3位・4位の3つに絞られます。
そして1位と3位は、「外部から出資を受けるか」「上場を目指すか」という同じ問いに帰着します。答えが「いいえ」なら、残るのは4位の知名度だけ。これが、一人での合同会社が広く選ばれている理由です。
デメリットは、設立時の設計で減らせる

定款に書いておけば、後から困らないこと
- 議決の方法。「総社員の同意」ではなく「業務執行社員の過半数」などに緩和しておく
- 業務執行社員の限定。誰が業務を執行するかを明示し、権限の範囲を定める
- 損益の分配割合。出資比率と切り離して、実際の貢献に応じた配分を定める
- 社員の加入・退社の要件。手続きを軽くしておけば、人を増やすときの障害が減る
- 持分の払い戻しの計算方法。退社時の金額をあらかじめ決めておけば、揉める余地が減る
これらはすべて、設立時なら定款に書くだけで済みます。設立後に追加するには、総社員の同意による定款変更が必要です。社員が増えてから、あるいは対立が生じてからでは、まず合意が取れません。
最低限、①議決の方法、②業務執行の分担、③一方が抜けるときの持分の扱い、この3つは書面にしておいてください。仲が良いうちに決めるのが、いちばん揉めない方法です。関係が悪くなってから話し合おうとしても、合意は成立しません。
知名度の問題を、もう少し具体的に測る

「信用されにくい」という表現は曖昧なので、実際にどの場面で何が起きるのかに分解します。
取引先の新規口座開設審査。大企業が新しい取引先を登録する際、社内規程で会社形態を条件にしている例はあります。ただし多くは「法人であること」「設立からの年数」「決算書の提出」を見ており、形態そのものではありません。設立1年目という点のほうが、形態より高いハードルになります。
不動産の賃貸借。事務所や店舗を借りる際、貸主や管理会社が形態を気にする場面はまれです。むしろ見られるのは、設立からの年数と決算書、そして代表者個人の信用情報です。設立直後は、形態を問わず代表者の連帯保証を求められるのが通例です。
採用時の応募者からの見え方。これは定量的に測りにくい領域です。ただ、求人媒体では会社形態を検索条件にできる仕組みがそもそも存在しません。応募者が形態を理由に離脱しているかどうかは、実際には確認しようがない、というのが実態に近いところです。
金融機関の融資審査。ここは明確に「差はない」と言えます。日本政策金融公庫の創業融資でも、信用保証協会の制度融資でも、会社形態による要件の違いはありません。融資で不利になる、というのは誤解です。
まとめると、知名度のデメリットが実害として現れるのは、大企業との新規取引で、かつ社内規程が厳格な場合にほぼ限られます。取引予定先が決まっているなら、事前に確認してしまうのがいちばん確実です。
「やめとけ」と言われる理由を、分解する

検索すると「合同会社はやめとけ」という論調の記事も出てきます。書かれている理由を分解すると、だいたい次の3つに集約されます。
ひとつめは、信用の問題。これは前述のとおり、業界と取引先次第です。実際に困った経験がある人が書いているのか、一般論として書かれているのかで、記事の重みが変わります。
ふたつめは、資金調達の制約。これは事実で、外部出資を前提にするなら合同会社は不向きです。ただし、融資については形態による差はありません。日本政策金融公庫の創業融資も、信用保証協会の制度融資も、合同会社で問題なく利用できます。
みっつめは、後から変更する手間。組織変更には約10万円と1ヶ月半かかります。「どうせ後で株式会社にするなら最初から」という主張には一理あります。ただし、その10万円と1ヶ月半を、本当に必要になるまで先送りできるという見方もできます。
まとめ

「会社 立ち上げ 合同会社 デメリット」で検索すると、「やめとけ」「後悔する」といった強い見出しの記事も出てきます。ただし中身を読むと、対象読者の前提(出資を受けるのか、一人なのか)で結論が変わっていることが多いので、自分の条件に近い記事を選んで読むのが有効です。
- freee|合同会社はやばい?やめとけといわれる理由や設立に向いている人・メリット否定的な評判の理由を分解して検証している記事です。
- HEARTLAND Picks|合同会社のデメリットとは?特徴や株式会社との違い、向いていないケース向いていないケースを具体的に挙げているのが特徴です。
- 創業手帳|合同会社は信用力が低い?メリット・デメリットや資金調達方法を全解説信用力という論点を正面から扱い、資金調達まで踏み込んでいます。
- 石黒税理士事務所|合同会社は後悔する?設立するメリットとデメリット・後悔しないためのポイント後悔しないための判断基準を示しています。
- HT税理士法人|合同会社のメリット7つを徹底深掘り!株式会社と比べたデメリットもメリット側から入り、対比としてデメリットを扱っています。
- リーパル会計事務所|合同会社を設立するメリット・デメリット 株式会社との違いや向いている人向いている人の条件が具体的に整理されています。
- 会社設立のミチシルベ|株式会社と合同会社の違いは?メリット・デメリットと選ぶポイント形態選択の判断ポイントを整理した記事です。
- INVOY|合同会社とは?設立メリット・デメリット、株式会社との違いを解説制度の基礎から解説しており、用語の理解に役立ちます。
- GINZA PLUS|合同会社のメリットとデメリットバーチャルオフィス事業者による解説。本店の観点も含まれます。
- freee|合同会社を設立する流れとは?自分一人で手続きする方法や必要書類・費用一人で作る前提の手続き。デメリットの多くが該当しない構成です。
- マネーフォワード クラウド会社設立|合同会社を自分ひとりで設立するには?ひとり設立に絞った解説。判断材料として使えます。
- 千代田税理士法人|合同会社設立は自分でできる?流れと設立後にやること4選設立後の実務。デメリットが実際に効く場面が想像しやすくなります。
- GVA 法人登記|合同会社から株式会社に組織変更する際の流れを解説デメリットを解消する手段としての組織変更を扱っています。
- GVA 法人登記|合同会社から組織変更する際の官報公告の掲載費用・期間組織変更にかかる費用と期間の具体的な数字が示されています。
- 松原税理士・社会保険労務士事務所|合同会社から株式会社に変更するメリットは?流れや費用変更する動機とタイミングを扱っています。
- 弥生|合同会社設立の流れは?自分で手続きする方法や必要書類、期間も解説手続き面の全体像。判断の前提となる情報が揃います。
- みずほ銀行|合同会社の作り方は?自分で設立する流れや手順、必要書類を解説金融機関の視点。口座開設での扱いを確認できます。
- ベンチャーサポート|合同会社設立の必要書類一覧手続き面での差を確認できます。
- freee|会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説メリット側の根拠となる費用差を確認できます。
- 弥生|会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説形態別の費用比較。デメリットと天秤にかける材料になります。
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