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合同会社のメリットは「安い」で終わらない。定款で仕組みを設計できます

最終更新 2026年8月15日 読了目安 約12分 文字数 約6,824字
合同会社のメリットは「安い」で終わらない。定款で仕組みを設計できます
設立費用が安い、維持が軽い。合同会社のメリットとして語られるのはたいていここまでです。しかし本当に面白いのは、定款で会社の仕組みそのものを設計できるという点にあります。損益の分配、業務執行の権限、議決の方法。株式会社では法律で決まっている部分を、合同会社では自分の実態に合わせて決められます。

合同会社のメリットは、「安い」で終わらせると半分しか使えません

設立費用が安い、維持が軽い。ここまではよく語られます。しかし合同会社が本当に面白いのは、定款で会社の仕組みそのものを設計できるという点です。株式会社では法律で決まっている部分を、合同会社では自分で決められます。

まず、よく挙げられる4つ

まず、よく挙げられる4つ
合同会社の4つの強み
1

設立費用が約10万円安い

登録免許税が最低6万円(株式会社は15万円)。さらに定款認証が不要なので、認証手数料15,000〜50,000円と謄本代も発生しません。合計で約10万円の差になります。

加えて、公証役場に行く工程がまるごと消えるため、設立にかかる期間も1週間ほど短くなります。急いでいる人にとっては、費用より日数の差のほうが効くこともあります。

2

維持の手間が軽い

決算公告の義務がありません。株式会社は毎期の決算を官報などで公告する義務があり、官報なら1回あたり7万円前後かかります。合同会社にはこの負担がありません。

また役員に任期がありません。株式会社の取締役は最長10年で改選登記(1万円)が必要ですが、合同会社の代表社員には任期そのものがないため、この手続きが発生しません。忘れて過料を受けるという事故も起きません。

金額としては年あたり数千円から1万円程度の差ですが、「やらなければならないことが1つ少ない」という意味は、金額以上に大きいと感じる人が多い部分です。

3

意思決定が速い

株式会社には株主総会という法定の機関があり、招集手続き、議決権の行使、議事録の作成といった形式が求められます。一人の会社でも、形式上はこれを踏むことになります。

合同会社には株主総会に相当する法定の機関がありません。社員総会は定款で任意に置けるだけです。置かなければ、決定に会議体を回す必要がありません。

4

決算の内容を外部に出さなくていい

決算公告がないということは、会社の財務状況を公開しなくてよいということでもあります。取引先や競合に売上や利益を知られたくない場面では、これが実利になります。

もっとも、融資を受けるなら金融機関には決算書を出します。公開しないというのは、あくまで不特定多数に対しての話です。

ここからが本題:定款で設計できること

ここからが本題:定款で設計できること

合同会社の面白さは、会社法が「定款で別段の定めをすることができる」としている範囲が広い点にあります。株式会社では動かせない部分を、合同会社では自分の会社の実態に合わせて変えられます。

定款で設計できることの一覧
A

損益の分配を、出資比率から切り離せる

もっとも実用性が高い設計です。株式会社では、配当は原則として持株数に比例します。合同会社では、定款で定めれば出資比率とまったく違う割合で利益を分配できます。

たとえば、資金を出す人が90%、実際に事業を回す人が10%を出資した場合。株式会社なら利益の9割は資金提供者に流れます。合同会社なら「損益の分配は各50%とする」と定款に書けば、そのとおりに配分できます。

定款の記載例(趣旨)
「当会社の損益の分配の割合は、社員の出資の価額にかかわらず、社員○○を◯割、社員△△を◯割とする。」
——このように、出資比率と切り離した割合を明記します。
B

誰が業務を執行するかを、限定できる

定款で何も定めなければ、社員全員が業務執行社員になります。つまり全員が会社の業務を行う権限を持つ状態です。出資だけしてもらいたい相手がいる場合、これは望ましくありません。

定款で業務執行社員を特定すれば、それ以外の社員は出資者としての立場に留まります。「お金は出すが経営には関与しない」という関係を、合同会社でも作れるということです。

C

議決の方法を、緩和できる

合同会社の重要事項は、原則として総社員の同意が必要です。社員が複数いると、これは非常に硬い要件になります。1人でも反対すれば何も決まりません。

定款で「業務執行社員の過半数の決定による」といった定めを置けば、この硬さを和らげられます。設立時に書いておけば1行で済む話が、後から変えようとすると総社員の同意が必要になります。順序が重要です。

D

社員の加入・退社の手続きを、設計できる

新しい社員を迎えるにも、原則として総社員の同意が必要です。将来的に人を増やす構想があるなら、定款で要件を緩和しておくと、そのたびの手続きが軽くなります。

退社時の持分の払い戻しについても、計算方法を定款で定めておけます。金額の算定でもめるのは、決めていなかった場合です。

メリットを活かすには定款を自分で設計する必要がある

ただし、設計しなければ使えない

ただし、設計しなければ使えない

ここが重要な点です。合同会社の自由度は、定款に書いて初めて意味を持ちます。ひな形をそのまま使えば、損益分配は出資比率どおり、業務執行社員は全員、議決は総社員の同意——というデフォルトのままです。

皮肉なことに、「認証がないから定款を作るのが楽」という合同会社の利点が、「定款を真面目に設計しない」という結果につながりやすいという面があります。公証人のチェックが入らないぶん、書式さえ整っていれば通ってしまうためです。

一人で作る場合はどうか。社員が自分だけなら、上記の設計はいずれも当面は意味を持ちません。分配する相手も、議決を争う相手もいないからです。

ただし将来、家族や共同経営者を社員に加える可能性があるなら、その時点で定款変更が必要になります。一人のうちに書いておけば自分の判断だけで済みますが、社員が増えてからでは全員の同意が要ります。「使う予定はないが、書いておく」という判断には合理性があります。

個人事業主と比べたときのメリット

個人事業主と比べたときのメリット

ここまでは株式会社との比較でしたが、実際に多いのは「個人事業のままか、合同会社にするか」という悩みです。この軸で見ると、メリットの中身が変わります。

所得の分散ができる。個人事業主は、事業の利益がそのまま自分の所得になります。所得税は累進課税なので、利益が大きくなるほど税率が上がります。法人にすれば、利益を役員報酬と会社の利益に分けられます。役員報酬には給与所得控除が使え、会社に残った利益には法人税率が適用されるため、合計の税負担を下げられる場面があります。

消費税の免税期間が新たに始まる。個人事業主として売上1,000万円を超えると、2年後から消費税の課税事業者になります。法人化すると、資本金1,000万円未満であれば設立から2期は原則として免税です。この効果は、売上規模によっては数十万円から百万円単位になります。

経費にできる範囲が広がる。役員社宅、出張日当、生命保険の一部、退職金の準備。いずれも個人事業主には使えない、あるいは制限がある手段です。要件を満たす必要はありますが、選択肢が増えること自体に価値があります。

有限責任になる。個人事業主は事業の債務について無限責任を負います。合同会社の社員は、出資した額を限度とする有限責任です。ただし実際には、金融機関からの借入で代表者が連帯保証を求められることが多く、この効果は思われているほど大きくありません。誇張して語られやすい部分なので、冷静に見ておいてください。

法人でなければ取れない仕事がある。取引先の規程で、個人とは契約しないと決めている企業があります。この場合、法人格の有無が仕事の有無に直結します。これが法人化の最も分かりやすい動機です。

誰に向いているのか

誰に向いているのか
合同会社が向く人・向かない人
向いている
向いていない
一人、または少人数で始める
意思決定に会議体が要らず、手続きが軽い利点をそのまま享受できます。
外部から出資を受ける予定がある
株式がないため、投資契約の枠組みが使えません。
受託・請負・BtoBサービス
取引先が法人格の有無しか見ていない業態では、形態の影響が出にくいです。
上場を目指している
合同会社のままでは上場できず、いずれ組織変更が必要になります。
出資と労力の比率がずれている
損益分配を自由に決められる利点が、そのまま効きます。
大企業との新規取引が主戦場
社内規程で形態を条件にしている先がある可能性があります。
個人事業からの法人成り
節税・免税・信用という目的は、形態に依存しません。
短期で採用を大きく増やす
応募母数への影響を避けたいなら、株式会社が無難です。

メリットを最大化する、設立時の3つの判断

メリットを最大化する、設立時の3つの判断

ひとつめは、出資額を1,000万円未満にすること。設立から2期は消費税の免税事業者になれます。合同会社を選ぶ人はコストを重視している場合が多いので、この効果は見逃せません。

ふたつめは、事業年度を設立日から最も遠い月末に置くこと。初年度をほぼ12ヶ月使えるため、決算と申告の回数が1回分後ろにずれます。合同会社は認証がないぶん定款を早く固めがちですが、ここは考えて決める価値があります。

みっつめは、将来の設計を1〜2条だけ入れておくこと。議決の方法、業務執行社員の限定、損益分配。この3つのどれかを入れておけば、社員を増やすときに定款変更をせずに済む可能性があります。一人のうちに書けば、コストはゼロです。

定款で定めた割合に基づく分配自体は認められています。ただし、経済的合理性のない配分——たとえば実際には関与していない親族に大きな割合を配分するなど——は否認される可能性があります。役割と貢献に見合った配分であることを説明できる状態にしておいてください。

名刺や対外的な呼称としては自由です。登記される肩書は「代表社員」ですが、社内での役職名に法的な制限はありません。ただし契約書の署名欄など、法的効力が問題になる場面では登記どおりの肩書を使うのが無難です。

違いません。法人税、法人住民税、消費税の扱いは会社形態に関係なく同じです。役員報酬による所得の分散、社宅制度、出張日当、退職金の準備といった手段も、どちらでも同じように使えます。節税を目的に形態を選ぶ意味は、ほとんどありません。

まとめ

まとめ
  • 設立費用が約10万円安く、設立期間も1週間ほど短い
  • 決算公告と役員任期がないため、維持の手間が1つ少ない
  • 本当の利点は、定款で会社の仕組みを設計できること
  • 損益分配・業務執行社員・議決方法を、実態に合わせて決められる
  • ただし定款に書かなければ、デフォルトのまま。自由度は使わないと得られない
  • 節税効果と税制上の扱いは、株式会社とまったく同じ
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください 検索キーワード:会社 立ち上げ 合同会社 メリット / 20 サイト

「会社 立ち上げ 合同会社 メリット」で検索すると、費用の安さと手続きの軽さを中心に据えた記事が多く並びます。定款による設計の自由度まで踏み込んでいる記事は少数なので、司法書士や税理士が書いた実務寄りの記事もあわせて見ると、判断材料が増えます。

  1. HT税理士法人|合同会社のメリット7つを徹底深掘り!株式会社と比べたデメリットもメリットを7つに分けて深掘りしており、この記事と補完関係にあります。
  2. リーパル会計事務所|合同会社を設立するメリット・デメリット 向いている人を解説向いている人の条件が具体的に整理されています。
  3. 創業手帳|合同会社は信用力が低い?メリット・デメリットや資金調達方法を全解説メリットとデメリットを対比しつつ、資金調達まで扱っています。
  4. INVOY|合同会社とは?設立メリット・デメリット、株式会社との違いを解説制度の基礎から解説されており、用語の理解に役立ちます。
  5. 会社設立のミチシルベ|株式会社と合同会社の違いは?選ぶポイントを解説形態選択の判断ポイントが整理されています。
  6. freee|合同会社はやばい?やめとけといわれる理由や設立に向いている人・メリット否定的な評判を検証しつつ、メリットを示している記事です。
  7. 石黒税理士事務所|合同会社は後悔する?設立するメリットとデメリット後悔しないための判断基準が示されています。
  8. HEARTLAND Picks|合同会社のデメリットとは?向いていないケースもあわせて紹介メリットの裏側を確認するのに使えます。
  9. GINZA PLUS|合同会社のメリットとデメリットバーチャルオフィス事業者による解説。本店選びの観点も含まれます。
  10. freee|合同会社を設立する流れとは?自分一人で手続きする方法や必要書類・費用メリットを実際に享受するための手続きがまとまっています。
  11. マネーフォワード クラウド会社設立|合同会社を自分ひとりで設立するには?ひとり設立での利点が具体的に説明されています。
  12. 弥生|合同会社設立の流れは?自分で手続きする方法や必要書類、期間も解説期間の短さというメリットを、工程で確認できます。
  13. freee|会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説費用面のメリットを数字で確認できます。
  14. 弥生|会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説形態別の費用比較。約10万円の差の内訳が分かります。
  15. マネーフォワード クラウド会社設立|会社設立でかかる維持費や年間費用は?維持の軽さというメリットを、金額で確認できます。
  16. IDEMAE|合同会社の設立費用はいくらかかる?内訳・安く抑える方法を解説実費まで含めた内訳。費用メリットの実態が掴めます。
  17. タケバ会計事務所|合同会社の会社設立ガイド!費用6万円からの手順と必要書類6万円という数字の根拠が示されています。
  18. 千代田税理士法人|合同会社設立は自分でできる?流れと設立後にやること4選設立後の実務。維持の軽さが実感できる内容です。
  19. GVA 法人登記|合同会社から株式会社に組織変更する際の流れを解説メリットが通用しなくなった場合の出口を確認できます。
  20. 松原税理士・社会保険労務士事務所|合同会社から株式会社に変更するメリットは?流れや費用株式会社へ移る動機を知ることで、合同会社の適用範囲が分かります。

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著者:合同会社commit / 合同会社FIELD 共同編集部

本記事は、合同会社commit(コンサルティング/Webマーケティング/Web制作)と 合同会社FIELD(事業グロース支援/人材/ITスクール)の共同編集部が制作しています。両社ともに合同会社として設立・運営しており、一人・少人数での法人設立と設立後の実務を、自らの経験も踏まえて扱っています。

記事は、法務省・法務局・国税庁・日本年金機構・中小企業庁・日本公証人連合会などの一次情報を確認したうえで作成し、合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら編集しています。参照元は各セクションの末尾に明示しています。ただし制度・手数料は改正されるため、手続きの際は必ず所管官庁の最新情報をご確認ください。個別具体的な判断については、税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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