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一人の合同会社は、実際どう回すのか。年間の手続きは5つだけです

最終更新 2026年8月15日 読了目安 約12分 文字数 約7,228字
一人の合同会社は、実際どう回すのか。年間の手続きは5つだけです
「一人で合同会社を作る」という話は設立記事によく出てきますが、作ったあとどう回すのかを書いたものは多くありません。この記事はそちらの話です。結論を言うと、一人の合同会社の日常は驚くほど何もありません。株主総会も取締役会も社員総会もなく、決議も議事録も原則として発生しないからです。

「一人で合同会社を作る」という話は、設立の記事にはよく出てきます。しかし作ったあと、実際にどう回すのかを書いたものは多くありません。この記事はそちらの話です。

結論を先に言うと、一人の合同会社の日常は、驚くほど何もありません。株主総会も取締役会も社員総会もなく、決議も議事録も、原則として発生しないからです。年に数回、決まった手続きをするだけです。

まず、構造を理解する

まず、構造を理解する
社員
自分ひとり
出資した人のこと。従業員という意味ではありません。持分100%を自分が持ちます。
業務執行社員
自分ひとり
実際に業務を行う社員。定款で限定しなければ、社員全員が自動的にこれになります。
代表社員
自分ひとり
登記される代表者。業務執行社員が1人なら、自動的にその人が代表社員です。
意思決定機関
なし
株主総会に相当する法定の機関がありません。社員総会は定款で任意に置けます。

この構造から導かれるのが、「決議」という概念がほぼ機能しないことです。総社員の同意が必要な事項——定款変更、社員の加入、持分の譲渡——も、社員が自分だけなら自分が決めれば成立します。

ただし、決めたことを記録に残す必要がある場面はあります。登記が必要な変更(本店移転、目的の追加、商号変更など)では、決定した事実を証する書面を添付します。一人でも「総社員の同意書」という形の書面を作ることになります。

1年間で発生する手続きは、5つだけ

1年間で発生する手続きは、5つだけ
一人合同会社の1年のスケジュール
年1回

役員報酬を決める

事業年度が始まってから3ヶ月以内に、その期の役員報酬額を決めます。一度決めたら、原則としてその期は変更できません。期中に増減させると、差額が損金として認められなくなります。

一人の会社なら、決定するのは自分です。ただし記録として「社員の決定書」のような書面を作り、日付を入れて保管しておいてください。税務調査があった場合、いつ決めたのかを示す資料になります。

実務上のコツ:決算が終わって次期の見通しが立った時点で決めるのが理想ですが、決算作業が長引くと3ヶ月を過ぎてしまいます。期首から2ヶ月以内に一度決めてしまうほうが安全です。
年1回・7月

社会保険の算定基礎届を出す

4〜6月の報酬額をもとに、9月以降の社会保険料の基準となる「標準報酬月額」を決め直す手続きです。毎年7月10日までに年金事務所へ提出します。

役員報酬が年間を通じて一定なら、記入する内容は毎年ほぼ同じです。電子申請にも対応しているので、慣れれば10分程度で終わります。

年1回・12月

年末調整をする

役員報酬から源泉徴収した所得税を精算します。自分ひとりでも、給与を受け取っている以上は必要な手続きです。生命保険料控除や扶養控除を反映させ、過不足を精算します。

あわせて、翌年1月末までに給与支払報告書を市区町村へ、法定調書合計表を税務署へ提出します。会計ソフトを使っていれば、この一連の書類は自動で作れます。

年1回・期末

決算を締める

事業年度が終わったら、帳簿を締めて決算書を作ります。貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書、個別注記表。合同会社には決算公告の義務がないので、作った決算書を外部に出す必要はありません。

ただし作らなくていいわけではありません。法人税の申告書に添付しますし、融資を受けるときには金融機関に提出します。

年1回・期末+2ヶ月

法人税等を申告・納付する

事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、法人税、法人事業税、法人住民税を申告して納めます。3月決算なら5月末が期限です。

赤字でも申告は必要です。そして法人住民税の均等割(年7万円程度)は、赤字でも納付します。ここが個人事業主との明確な違いです。

自分でやるか、税理士に頼むか:法人税の申告書は、個人の確定申告書とは難易度が違います。別表と呼ばれる付表が多数あり、税務調整の知識が必要です。初年度から自力で完結させるのは、現実的には難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
一人合同会社の日常の実務一覧

個人事業主だったころと、何が変わるか

個人事業主だったころと、何が変わるか
一人合同会社と個人事業主の日々の違い

もっとも大きく変わるのは、お金の出し入れです。個人事業主なら、事業用口座から生活費を引き出すのは自由でした。法人ではそれができません。会社のお金と自分のお金は完全に別で、自分が受け取れるのは役員報酬として決めた額だけです。

会社の口座から個人の口座へ勝手に移すと、役員貸付金として処理されます。これは会社が自分にお金を貸している状態で、返済義務が生じ、利息の計上も必要になります。「自分の会社なのだから自分のお金」という感覚は、法人になった時点で捨ててください。

次に変わるのが社会保険です。国民健康保険と国民年金から、健康保険と厚生年金に切り替わります。保険料は上がりますが、将来受け取る年金額も増えます。また傷病手当金など、国民健康保険にはない給付が使えるようになります。

そして経費の幅。役員報酬を経費にできる、社宅制度が使える、出張日当を設定できる、退職金を準備できる。個人事業主にはなかった選択肢が増えます。ただしどれも要件があるため、使うなら制度を正しく理解する必要があります。

一人でも役員報酬は勝手に変えられない

社会保険は、一人でも必ず加入する

社会保険は、一人でも必ず加入する

一人の合同会社で、設立直後にもっとも見落とされるのがこれです。役員が自分ひとりでも、役員報酬を出すなら健康保険と厚生年金に加入する義務があります。従業員がいるかどうかは関係ありません。

手続きは、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を出すところから始まります。期限は事実発生から5日以内。設立後の手続きのなかで、もっとも期限が短いものです。あわせて「被保険者資格取得届」を提出し、扶養家族がいれば「被扶養者(異動)届」も出します。

保険料は、役員報酬の額に応じた標準報酬月額をもとに計算されます。会社負担分と個人負担分がありますが、一人会社ではどちらも実質的に自分が払うことになります。役員報酬20万円なら、労使合計で月58,000円前後です。

この負担を避けるために「加入しない」という選択をする人がいますが、後から遡って請求されるリスクがあります。年金事務所は法人登記の情報を把握しているため、未加入の法人には調査の連絡が入ることがあります。遡及される期間は最大2年で、延滞金がつく場合もあります。

報酬をゼロにするという選択:役員報酬を出さなければ、社会保険の被保険者にはなりません。在職中に会社を作る場合や、当面は個人の貯蓄で生活する場合には現実的な選択です。ただし会社の経費に人件費が計上されないため利益が残りやすく、法人税がかかる点は理解しておいてください。

一人だからこそ、やっておくべきこと

一人だからこそ、やっておくべきこと

決めたことを、書面に残す習慣

一人だと、決定と実行の間に何のプロセスもありません。思いついた瞬間に実行できます。これは合同会社の利点ですが、あとから「いつ、何を決めたのか」を示せないという弱点にもなります。

役員報酬の決定、重要な契約の締結、資産の購入。こうした場面では、簡単でいいので日付入りの書面を作って保管してください。税務調査でも、融資の審査でも、記録があるかないかで説明の説得力が変わります。

会社の口座と個人の口座を、完全に分ける

当たり前のようですが、実際にはこれが崩れている一人会社は少なくありません。個人のクレジットカードで会社の経費を払う、会社の口座から個人の買い物をする。一度混ざると、決算のときに整理する作業が発生します。

法人カードを作り、会社の支出はすべてそこに集約するのが最も簡単な解決策です。設立直後は審査が通りにくいこともありますが、決済代行系のカードなら比較的作りやすい傾向があります。

自分が倒れたときのことを考えておく

一人会社の最大のリスクは、代表者が動けなくなったときに会社が完全に止まることです。病気、事故、あるいは家族の事情。代表社員が1人しかいない合同会社では、誰も代わりに契約も支払いもできません。

対策としては、業務執行社員を配偶者や家族にもう1人置く、信頼できる相手に必要な情報を託しておく、といった方法があります。緊急性は低い論点ですが、事業が軌道に乗った段階で一度考えておく価値があります。

健康保険の傷病手当金:法人の役員として健康保険に加入していれば、病気やケガで働けなくなった場合に傷病手当金を受け取れる可能性があります。個人事業主が加入する国民健康保険にはない給付です。一人会社にとって、社会保険料の負担に対する数少ない実利のひとつなので、制度として知っておいてください。

合同会社には株主総会や取締役会のような法定の会議体がないため、議事録という形式の書面は基本的に不要です。ただし登記が必要な変更をする際には「総社員の同意書」などを添付します。また税務上、役員報酬の決定時期を示す書面は作っておいたほうが安全です。

増やせます。新たに出資してもらい、定款を変更して社員として加えます。登記も必要です。ただし社員が2人以上になると、総社員の同意が必要な事項について合意形成が要るようになります。増やす前に、議決の方法を定款で定めておくことを強く勧めます。

できます。出資して社員になってもらい、業務執行社員として登記します。所得を分散できるため節税につながる場合がありますが、報酬額が業務の実態に見合っていないと否認される可能性があります。実際に業務に関与していることが前提です。

設立1年目に、実際につまずくところ

設立1年目に、実際につまずくところ

一人の合同会社を立ち上げた人が、初年度に「聞いていなかった」と感じやすい点を挙げておきます。どれも制度としては明文化されていますが、設立の解説記事では扱われないことが多い部分です。

源泉徴収と納付。自分に役員報酬を払う場合、そこから所得税を源泉徴収して、翌月10日までに納付する必要があります。自分に払う給与であっても、この義務は発生します。納期の特例を申請しておけば年2回にまとめられるので、設立時に申請書を出しておくと事務が軽くなります。

住民税の特別徴収。役員報酬から住民税を天引きして、会社が納付する仕組みです。設立初年度は前年の所得に対する住民税を個人で払っている場合が多く、切り替えのタイミングが分かりにくくなります。市区町村から通知が来るので、それに従って処理します。

期首から3ヶ月以内という役員報酬の期限。初年度は「設立日から3ヶ月以内」です。設立の慌ただしさのなかで、この期限が過ぎてしまう例があります。過ぎた後に決めた報酬は、その期の損金として認められない可能性があります。

消費税の判定。設立から2期は原則として免税ですが、特定期間(第1期の前半6ヶ月)の課税売上高と給与支払額がいずれも1,000万円を超えると、第2期から課税事業者になります。順調に立ち上がった一人会社が、意図せずこの条件に該当することがあります。

インボイス登録の判断。免税事業者のままだと、取引先が仕入税額控除を受けられません。取引先が法人中心なら、登録を求められる可能性があります。登録すると免税のメリットを自ら手放すことになるため、取引構造を踏まえた判断が必要です。

まとめ

まとめ
  • 一人の合同会社では、決議も議事録もほぼ発生しない
  • 年間の手続きは5つ。報酬決定・算定基礎届・年末調整・決算・申告
  • 役員報酬は期首から3ヶ月以内に決め、その期は変更できない
  • 会社のお金と個人のお金は完全に別。勝手に移すと役員貸付になる
  • 決めたことは日付入りの書面に残す習慣をつける
  • 代表者が動けなくなったときの備えを、軌道に乗った段階で考えておく
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください 検索キーワード:会社 立ち上げ 合同会社 一人 / 20 サイト

「会社 立ち上げ 合同会社 一人」で検索すると、設立手続きの解説が中心に並びます。設立後の運用について書かれた記事は相対的に少ないため、社会保険や役員報酬といった個別のキーワードでも探すと情報が揃います。あわせて見ておくと、設立後の1年がイメージしやすくなります。

  1. freee|合同会社を設立する流れとは?自分一人で手続きする方法や必要書類・費用一人で設立する前提の手続き全体がまとまっています。
  2. マネーフォワード クラウド会社設立|合同会社を自分ひとりで設立するには?ひとり設立に絞った解説。手続きの流れが確認できます。
  3. freee|一人で会社を作る手順は?メリット・デメリットや個人事業主との違いも解説一人会社全般。意思決定の速さという利点に触れています。
  4. マネーフォワード クラウド会社設立|一人で会社を作る手順は?メリットやリスク一人会社のリスク面にも踏み込んでいます。
  5. ベンチャーサポート|【一人で会社を作る手順】設立時の注意点や一人会社のメリット一人会社特有の注意点が具体的に列挙されています。
  6. 弥生|1人で会社を作る手順は?個人会社と個人事業主の違いや費用について解説個人事業主との比較。運用面の差を考える材料になります。
  7. 大阪司法書士会|会社を一人で設立したいのですが、どうすればいいですか?司法書士会の公式Q&A。登記実務の立場からの回答です。
  8. 千代田税理士法人|合同会社設立は自分でできる?流れと設立後にやること4選設立後にやることを扱っており、この記事と近い視点です。
  9. HT税理士法人|合同会社のメリット7つを徹底深掘り!株式会社と比べたデメリットも運営の軽さという利点が具体的に説明されています。
  10. 創業手帳|合同会社は信用力が低い?メリット・デメリットや資金調達方法を全解説一人会社での資金調達についても触れています。
  11. リーパル会計事務所|合同会社を設立するメリット・デメリット 向いている人を解説向いている人の条件が整理されています。
  12. HEARTLAND Picks|合同会社のデメリットとは?向いていないケースもあわせて紹介一人と複数社員でデメリットが変わる点が確認できます。
  13. freee|合同会社はやばい?やめとけといわれる理由や設立に向いている人否定的な評判の中身を検証しています。
  14. みずほ銀行|合同会社の作り方は?自分で設立する流れや手順、必要書類を解説法人口座の運用まで見据えた解説です。
  15. 弥生|合同会社設立の流れは?自分で手続きする方法や必要書類、期間も解説設立の全体像。運用に入る前の準備を確認できます。
  16. マネーフォワード クラウド会社設立|会社設立でかかる維持費や年間費用は?毎年の費用。1年の運用コストを把握できます。
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  19. INVOY|合同会社とは?設立メリット・デメリット、株式会社との違いを解説社員・持分といった用語の理解に役立ちます。
  20. 石黒税理士事務所|合同会社は後悔する?設立するメリットとデメリット設立後に後悔しないための判断基準を示しています。

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著者:合同会社commit / 合同会社FIELD 共同編集部

本記事は、合同会社commit(コンサルティング/Webマーケティング/Web制作)と 合同会社FIELD(事業グロース支援/人材/ITスクール)の共同編集部が制作しています。両社ともに合同会社として設立・運営しており、一人・少人数での法人設立と設立後の実務を、自らの経験も踏まえて扱っています。

記事は、法務省・法務局・国税庁・日本年金機構・中小企業庁・日本公証人連合会などの一次情報を確認したうえで作成し、合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら編集しています。参照元は各セクションの末尾に明示しています。ただし制度・手数料は改正されるため、手続きの際は必ず所管官庁の最新情報をご確認ください。個別具体的な判断については、税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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