定款の事業目的はどこまで書くか。一人で会社を立ち上げるときの決め方
会社を一人で立ち上げると決めて、商号も本店も資本金も決まった。それでも定款が書けない——という状態になったら、たいてい原因は事業目的です。
事業目的は、会社設立の書類のなかで唯一「正解が用意されていない」項目です。ひな形を写せば済むものではなく、自分の事業を言葉にする必要があります。
事業目的は、何のために書くのか

事業目的は、会社が行える事業の範囲を定めるものです。登記簿に載るため、取引先も金融機関も誰でも見られます。会社を一人で立ち上げる場合でも、この点は変わりません。
実務で効いてくるのは次の3場面です。
どのくらい具体的に書けばいいのか

抽象的すぎても具体的すぎても実務で困ります。判断の基準は「第三者が読んで、何をする会社か想像できるか」です。
| 書き方 | 例 | 評価 |
|---|---|---|
| 抽象的すぎる | コンサルティング業 | 何のコンサルか分からない。口座審査で説明を求められる |
| ちょうどよい | 経営コンサルティング業 | 分野が分かる。実務でも通る |
| ちょうどよい | Webサイトの企画・制作・運営 | 業務が具体的に想像できる |
| 細かすぎる | 美容室向けInstagram運用代行業 | 対象を絞りすぎ。少し広げるだけで変更登記が必要になる |
一人で会社を立ち上げる場合、事業が育つ過程で対象や手法が変わることがよくあります。細かく限定しすぎると、そのたびに定款変更と登記が必要になります。
将来の事業を、どこまで入れておくか

会社設立のあとで事業目的を追加するには、定款変更と変更登記が必要です。登録免許税は3万円。司法書士に依頼すればさらに報酬がかかります。
変更登記の登録免許税
一緒に書いておく費用
現実的な目安
だからこそ、2〜3年以内にやる可能性のある事業は、会社設立の時点で入れておくのが定石です。書いても費用は増えません。
たとえばWeb制作で一人で会社を立ち上げるなら、制作だけでなく「Webサイトの運用・保守」「デジタルマーケティングに関する企画・コンサルティング」「各種セミナーの企画・運営」あたりまで入れておくと、事業が広がったときに登記をやり直さずに済みます。
書きすぎると、逆に困ることがある

「あとで足すと3万円かかるなら、思いつくかぎり書いておこう」——これをやりすぎると、別の問題が起きます。
関連性のない事業を20も30も並べると、登記簿を見た人が「何をする会社か分からない」状態になります。金融機関は法人口座の開設審査で事業の実体を確認するため、会社設立の直後ほどこれが不利に働きます。
- 飲食店経営、不動産売買、人材派遣、輸出入、コンサルティング……と脈絡なく並んでいる
- 許認可が必要な事業ばかりで、実際にはどれも許可を取っていない
- 資本金の規模と事業内容が明らかに釣り合っていない
こうした定款は、口座開設で追加の説明を求められたり、断られたりすることがあります。一人で会社を立ち上げる場合、資本金も小さいことが多いため、なおさら整合性を見られます。
許認可が必要な業種は、文言が要件になる

許認可が必要な業種では、事業目的の書き方そのものが許可の要件になります。文言が要件を満たしていないと、会社設立の後で変更登記からやり直しになります。
| 業種 | 必要な許認可 | 所管 |
|---|---|---|
| 建設業 | 建設業許可 | 都道府県/国土交通省 |
| 人材紹介・派遣 | 有料職業紹介事業許可/労働者派遣事業許可 | 都道府県労働局 |
| 中古品の売買 | 古物商許可 | 警察署 |
| 飲食店 | 飲食店営業許可 | 保健所 |
| 不動産仲介 | 宅地建物取引業免許 | 都道府県/国土交通省 |
| 運送業 | 一般貨物自動車運送事業許可 | 運輸支局 |
該当する可能性があるなら、定款を書く段階で所管官庁の記載例を確認するか、行政書士に事業目的の文言だけ見てもらうのが確実です。会社設立を一人で進める場合でも、ここだけは確認する価値があります。
書き方の実務:順番と体裁

事業目的は、定款の第2条あたりに置かれるのが通例です。体裁もほぼ決まっているので、ひな形どおりに書けば問題ありません。
第2条(目的)
当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1. Webサイトの企画・制作・運営
2. ソフトウェアの企画・開発・販売
3. デジタルマーケティングに関する企画・立案・コンサルティング
4. 各種セミナー・研修の企画・運営
5. 前各号に附帯関連する一切の事業
- 番号は算用数字でも漢数字でもよい(ひな形にそろえる)
- 並び順は、主力事業を上に置くのが一般的
- 包括条項は必ず最後
- 「業」「事業」の表記は統一する
なお、株式会社の場合は公証役場の事前チェックで表現の指摘が入ることがあります。合同会社には認証がないため、自分で確認するしかありません。一人で合同会社を立ち上げるなら、複数のひな形を見比べてから決めてください。
あとから変えたくなったら

会社を一人で立ち上げたあと、事業目的を追加・変更する手順です。難しくはありませんが、費用と日数がかかります。
- 定款変更を決議する株式会社なら株主総会の特別決議。一人なら自分が決めて議事録を作ります。合同会社なら総社員の同意です。
- 変更登記を申請する効力発生から2週間以内に本店所在地の法務局へ。登録免許税は3万円です。
- 登記完了後、必要な届出をする許認可が絡む場合は所管官庁へ、取引先には登記事項証明書を出し直します。
総額で3〜6万円。会社設立の時点で1行足しておけば0円だったことを考えると、最初に先読みしておく価値がわかります。
まとめ

- 事業目的は、法人口座の審査・許認可・取引先の確認で実際に見られる
- 粒度は「第三者が読んで何をする会社か想像できるか」で判断する
- 2〜3年以内にやる可能性のある事業は、会社設立の時点で入れておく
- 末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」を必ず置く
- 並べすぎると法人口座の審査で不利。5〜10項目、系統をそろえる
- 許認可業種は、事業目的の文言が要件。先に所管官庁の記載例を確認する
- あとから追加すると変更登記で3万円+日数がかかる
「会社 立ち上げ 定款 事業目的」で調べている方に向けて書きました。同じキーワードで検索すると次のようなサイトも出てきます。会社を一人で立ち上げるとき、書き手の立場によって触れている論点が変わるので、あわせて読むと判断材料が増えます。
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